竹谷賢二さん×MAKES山口一真さん対談

KONAチャレを通じて、私たちが伝えたかったこと。

この3月で3年間のプロジェクトが終了したKONAチャレンジ(以下KONAチャレ)。リーダーの竹谷賢二さん(TK)と、プロジェクトをサポートする中で自らもKONAを目指すに至ったMAKES(メイクス)の山口一真さんに、KONAチャレの3年間と、その間のメンバーの成長や変化、KONAチャレを通じてトライアスロン界に伝えたかったことなどについて語ってもらった。

プロフィール

竹谷賢二(TK)

KONAチャレンジ・プロジェクトリーダー。マウンテンバイク競技のオリンピアンで、現役引退後はトライアスリートとしてKONAに8年連続出場・完走している。KONAチャレのプロジェクトリーダーとして、メンバーたちへのアドバイスを手がけてきた。
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Interviewer

山口一真

(株)メイクス取締役・KONAチャレンジ担当。1982年東京生まれ。小学校から大学までバスケットボールに打ち込む。社会人になってスポーツから遠ざかり、一時期体重が100kgを超えたが、選手時代のノウハウを活かした食事と運動により1年間で40kgの減量に成功。2018年メイクスのKONAチャレ担当になったのを期にスイム・バイク・ランのトレーニングを始め、木更津トライアスロンでレースデビュー。秋にはアイアンマン台湾を完走した。以後も毎年アイアンマンや宮古島などに出場を続けている。

人生の本質に通じる言葉から
始まったKONAチャレ

山口まずはKONAチャレも一区切りということで、ありがとうございました。今日はこの3年間を振り返りながら、メンバーの変化や、このプロジェクトを通じて伝えたかったことなどについて語りたいと思います。

TKこちらこそありがとうございました。KONAチャレを通じて良い刺激が多方面に広がったのではないかと思います。

山口私自身もKONAチャレの企画に携わって、人生が変わりました。

TK山口さんも人生の「100年コーチ」から、今やトライアスロンのセミプロを名乗るまでに成長されて(笑)。

山口やめてください。おこがましいですよ(笑)。冗談はさておき、まずはこのプロジェクトがどういうきっかけで生まれたのかというところから振り返りたいと思います。実は、私はプロジェクトの概要が固まってから、運営責任者を任されるというかたちで参加したので、そもそもの経緯は詳しく知らないんです。

TKまず仲村(周作)さん(メイクス代表)がKONAチャレスタートの前年2017年からトライアスロンを始めて、私のパーソナルトレーニングを受けるようになり、練習するうちに「トライアスロンの素晴らしさを発信できるようなことを何かやりたい」という話になったんです。そこからKONAチャレがスタートした。

自身もKONAチャレメンバーとしてプロジェクトに参加したメイクスの仲村周作代表(写真左)。どんどん健康になって・満たされていく、トライアスロンのもつポテンシャルを伝える企画をと考え、KONAチャレの立ち上げに至った

山口2018年春のKONAチャレ最初の対談で仲村はこんなことを語っていますね。

「毎朝5時〜6時に起きてトレーニングするのが楽しくてしようがない。どんどん健康になって、心も満たされる。脳も活性化して仕事にもプラスになりました。これなら年を取ることに対して前向きになれる。メイクスが目指す健康寿命100歳社会への貢献にもつながるので、ぜひ広げたいと思いました」

TKそう。まさにこれがKONAチャレの本質であり、トライアスロンの本質でもあります。

追求のスイッチが入ることから
本気のKONAチャレが始まる

山口私とKONAチャレの出会いは、ルミナの中島社長と村山編集長が最初の企画をプレゼンしに来てくれたときです。私は仲村から「責任者をやれ」と言われて出席したんですが、どういう企画かまったく知らず、アイアンマンが何かも知らない中で話を聴いていました。そこで仲村に「せっかくだから山口もやれば」と言われたんです。

TKいきなりの無茶ぶりだった(笑)。でもいやだと言わなかったんですね。

山口メイクスの行動指針に「まずはYes!」というのがあるんです。何でも「できない」と拒絶するのではなく、まずイエスと言って、やれる方法を考える。そのままでは無理なら、どこをどう変えたらできるか、やり方を提案する。そういうのが染みついているのでまずはイエスと言いましたが、正直そのときは無理だと思っていました。

そもそもまったく泳げないので、3.8㎞なんて泳げるわけがない。だからちょっとやってお茶を濁そうと考えていました(笑)。

TKまだ「やらされてる状態」だったんですね。

山口ゴールデンウィークから練習を開始して、その年の10月のアイアンマン台湾デビューというかなり無茶なスケジュールでした。

このときはスイムが短かったんですが、なんとか完走してすごい充実感を味わった。そこで自分もメンバーの皆さんみたいに「理想を追求したい」と考えるようになって、KONAを目指しだした。

TK最初は「やります」とは言ったけど、「KONA」とは言っていなかったわけですからね。アイアンマンに出てみてスイッチが入った。

山口もうひとつ私を変えてくれたのはメンバーの皆さんです。

メンバーにインタビューしていると、みんなそれぞれに理想を追求しているのがわかりました。KONAに出るということ以前に、「KONAに出られるアスリートになる」という理想を追求することで、生活・人生が充実して輝いている。家族も応援してくれる。

それを見て、自分も理想を追求して輝きたいと思ったんです。

2018年春に最初のレギュラー&フレンドメンバーが選出され、3カ年プロジェクトとしてスタートを切った(写真はキックオフ・ミーティング)

メンバーに本気のスイッチが入った瞬間

山口KONAチャレがスタートした頃、竹谷さんはKONAに何人行けると思っていました?

TK3割くらい、つまり12人中4人行けたらいいかなと考えていました。

山口想定打率が高かったんですね。私はゼロだと思っていました。メンバーの当時のタイムをKONAに行っている人のタイムと比べると2時間とか、あまりに開きがありすぎたから、このギャップを埋めるのは無理だと、普通の感覚なら思いますよね。

ところがその数カ月後にアッキー(皆川亜紀子)さんがいきなりKONA出場権をとってびっくりしました。

TK大事なのは本気かどうか、目指す気概をもってやっているかだと思うんです。なんとなく「いつか行きたい」から「やるぞ!」へ、スイッチがどこで入るか。期限を決めて決断したからアッキーも行けたんです。

「いつか」ではいつまでたっても行けない。人は決意しないと行動につながらないし踏ん張れないんですよ。

山口それは投資と同じですね。資産形成も「できたらいいな」と思っているうちは始められない。メイクスの仕事で言うと、不動産の仕事に必要な宅建(宅地建物取引士)の資格も「いつか」ではいつまでたっても取れない。「いつか」だと勉強しないからです。「今年取る」と決めるから勉強する。

KONAチャレのメンバーも「いつか行けたらいいな」から、「3年で行く!」と決めたからスイッチが入った。

TKそれがすごいパワーになるんです。

山口メンバーもインタビューでそう語る人が多かったですね。KONAチャレメンバーに選ばれるとは思わなかったけれど、とりあえず出してみて、選ばれた瞬間、心が引き締まったと。まわりにもそう思われることで、自分の姿勢を常に意識せざるをえなくなる。

TKまわりに「KONAを狙ってる人」として見られると、実際にKONAを狙っている人として振る舞うようになるんですね。

山口そしてアッキーさんのKONAゲットで、みんな「スイッチが入ったらほんとに行けるんだ」と感じて一気に盛り上がりました。そこまでは、「みんながんばったね」で終わってしまうんじゃないか、ホントに行けるかな・・・という雰囲気もあったのが、さらにもう一段本気のスイッチが入った。

2018年10月、KONAチャレ初の「卒業生」としてアイアンマン世界選手権の舞台に立った「アッキー」こと皆川亜紀子さん(写真右)

KONAでもトライアスロンを通じて
自分の本質が問われる

山口アッキーさんはKONAチャレ以前から毎年アイアンマンに年3回くらい出てレース経験は豊富でしたが、一方でメンバーにはまだアイアンマンに出ていない人もいました。かなりバラエティーに富んだメンバーでしたよね。

TKそういう方針で千差万別の人を選んだんです。あえて資料を匿名にして、レース経験やエイジ・性別などの属性で人数を振り分け、なるべくバラエティーに富んだ顔ぶれにした。選ぶ基準は実力より「伸びしろ」を重視しました。

持ちタイムで速い人、確実に出られる人を選べば、KONA出場率は上がるけど、それでは「あの人なら出られるよね」ということになってしまう。

そうではなく、本気で取り組めばこんなに変われる、こんなに伸びるんだというストーリーをいろんな属性の人たちから作りたかったんです。

山口その最初のサクセスストーリーがアッキーさんだったわけですね。

しかし、そのアッキーさんがその年KONAに初めて出た後に見せた落胆ぶりが、また強く印象に残っています。

竹谷さんはその前のフィードバックで、「初めて出た人は面食らって実力が出せない。それで悔しくて次も出たくなる」と言っていましたが、アッキーさんもKONAを楽しもうと思っていたら、現地で浮かれてケガをしたり、想定外のハードなコース・コンディションに苦しんでレースはさんざんだった。

現地でのインタビューでも、「アワードパーティーの前に浴衣着てこんなに落胆してるとは思わなかった・・・」と語っていたそうですね。

初めてのKONAを走るアッキー。夢の舞台は、ただ甘美なご褒美ではなく新たな挑戦への入り口だったと振り返り、ほかのメンバーたちの意識をさらに引き上げた

TK「KONAに出るだけでハッピー」という人もたくさんいるけど、KONAチャレのスタンスはそういうことでなく、自分に嘘偽りなく本当に心底楽しいと思うかです。

「KONAのレースはご褒美として楽しむ」という人たちは、本当に自分に嘘偽りなく心底楽しめているのか。本当の気持ちを包み隠して楽しんでいるふりしているんじゃないのかと私の目には見える。だからアッキーには「本当のところはどうなのか?」と訊いたんです。

せっかく多くの時間と努力を注ぎ込んで出場権を獲得したのに、KONAでとことんやらず、出ただけで満足というのは、自分をごまかしているんじゃないか。大切なのは自分に対してごまかさず、しっかりやりきったかどうかだと私は思います。

山口すごいのは竹谷さんがKONAでも本質を追求しているということです。トライアスロンは手段であって、本当に追求しているのは自己実現という人生の本質だと。

KONAに出てうれしいかもしれないけど、KONAでも自分の在り方を問われる。自分のパフォーマンスが十分に発揮できないと悔いが残って、また忘れ物を取りにいくことになる。それって人生を象徴していますよね。

TKそうやってKONAに行くたびにどんどん上っていくわけです。比較対象は自分であり、自分に納得いくレースができたかどうか。KONAでも他のレースでもそうです。

目標を設定することで
日々自分の在り方に確信がもてる

TKトライアスロンをビジネスにたとえれば、KONA出場は売上げみたいなものですね。つまり自分の在り方を確かめる手段です。

KONAを目指すことで、KONAのレース当日だけでなく、日々自分の在り方が確かめられる。それってすごく大事なことだと思います。

KONAを目指すからこそ、「自分はかくありたい、かくあるべきだ」ということが日々確かめられる。人間にとって「自分とは何か? 自分はどうなっていくのか?」という疑問や不安が多くの悩みの根源だと思いますが、KONAを目指すことでそれを毎日クリアにできる。

山口そういう毎日を送ることができるのは幸せですよね。トライアスロンのパフォーマンスを上げるため、毎朝起きてトレーニングするかしないか選択するわけですが、別に誰かに強制されているわけじゃない。

会社で仕事するのはある意味強制の部分があって、やらなきゃいけないからできるというところがあります。しかし、トライアスロンはプライベートな世界、やらなくてもいい世界で理想を突き詰めるわけですから、相当のメンタリティーがないとできない。

むしろ人としての在り方が鍛えられる人生の本当の勝負はそこにあるんじゃないかと思います。

TK人それぞれ個性があるし、実現すべきことは違うから一概に言えませんが、何をやるにしてもコツコツやるチャレンジを設定する人としない人がいます。

どちらが伸びるかというと、設定する人の方が伸びるんです。「コツコツ」というのは地味に同じことを繰り返すんですけど、前向きに少しずつ進んでいくチャレンジマインドがそこに含まれているかどうかが重要です。

山口コツコツやって、その結果KONAに行くのも大事だけど、日々コツコツ自分と向き合い続けて、「KONAにいつでも行ける」という自分の在り方が作れたら、人生でどんなことをやっても成功しそうな気がします。

結果としての成功というより、コツコツ続けるチャレンジそのものを通じて、人としての幸せを手に入れることができる人間力が身につくのではないかと思います。

人としての在り方を追求する人は
どんな逆境でも成長できる

TKコロナ禍で去年も今年の今現在もアイアンマンの大会は開催されていないし、ビジネスでも売上げが厳しいとか色々と難しい状況です。

それでも自分の在り方というのは変わらないし、まわりの状況が変わって収入が減っても自分の在り方は自分で決めることができます。そこがしっかりしていればどんな状況でも生きていける。

ただし、そういう能力というのは、行動しないと身につかないものなんですね。ただ頭で考えて、「状況がこうだからダメなんだ・・・」という人は何やってもうまくいかない。「状況がこうだから、じゃあどうしよう」と考えながら行動する。そういうしなやかな強さをもつ人は、どんな状況でも打開していくことができます。

山口コロナ禍はそこを深掘りするための良いきっかけになったかもしれません。

メイクスの営業でも、「コロナだから、緊急事態宣言が出ているから売れない」と考える人と、逆に「コロナだから、緊急事態宣言が出ているから、お客さんは家にいる可能性が高い。オンラインですぐつながるからチャンスがある!」とポジティブに考える人がいます。

前向きの思考で主体的に考え行動できる人は、こういう状況でも自分でチャンスを生み出し、結果を出していますね。23歳でダントツのトップセールスがいるんですが、彼は状況をいち早く読んで、去年の緊急事態宣言が出る前からすでにフルオンラインで商談を始め、ケタ違いの成績を上げています。まさにコロナで止まった人と主体的に考え行動した人で雲泥の差がついた。

TK先見の明があって、「こういう商談の方法が手段として活用できる」と読んでいたから、自信をもってできたんでしょうね。それがこういう逆風の中でギューンと大きな差に表れた。仕事をやらされている人と自分でやっている人の差が出たということでしょう。

自身もKONAチャレ担当者として携わる中で、本気でKONAを目指すようになった山口さん(写真は木更津トライアスロン)

山口トライアスロンでも同じことが言えると思います。トライアスリートのSNSを見ていても、レースがなくてダメという人もいれば、レースがないからこそいろんな試行錯誤ができると考える人もいる。

普通は4〜6カ月ごとにメインのレースを入れますから準備期間が短く、試行錯誤しながらやれることは限られますが、ポジティブな人はコロナでレースがないことを生かして長期戦略を立て、これまでやれなかった試行錯誤やベースからの再構築に取り組んでいます。

KONAチャレでも、これまでやれなかったことに取り組んで、パフォーマンスを大きく伸ばしている人たちがいます。

すでにKONAスロットを獲得している人たちも、1年延びた分しっかり準備ができたと思うので、レースでどういうパフォーマンスが発揮できるか楽しみです。

TK一昨年のアイアンマン台湾でKONA出場権をとった3人は、2年間準備してレースに臨むことになります。

レースがない中でトレーニングを継続し、かなり溜まっているものもあると思うので、KONAで大ブレイクしてくれることを期待しています。

特に印象に残っているのは
大きくポジティブに変わったメンバー

山口メンバーの中で竹谷さんが特に注目した人、高く評価していた人はいますか?

TKみんなそれぞれ伸びたし、変わったので、MVPを決めるのは難しいですが・・・私の印象に残ったのは木家勝之さんです。

もともと能力はあったけど故障がちだったりしてあきらめてしまい、ネガティブになっていた。ダメな理由を探す天才みたいなところがありました。それが去年大きく変わって、すごくポジティブになり、今はできること探しの天才です。

考え方も生活もすべてがダークサイドからライトサイドに変わったのが印象的です。それによって能力も右肩上がりになっていますから、レースが再開されればKONAに出られると思います。

山口きっかけは何だったんですかね。

TK台風で中止になった、一昨年のアイアンマン韓国あたりはまだネガティブで、取り組みもモヤモヤしていました。それがコロナでどん底に落ち、落ちるところまで落ちてからV字回復した。

山口お子さんが生まれたことが良いきっかけになったのかもしれません。

TKそれも大きいでしょうね。東京を出て、生活やトレーニングの環境を整えたことも良かったと思います。仕事も変えて割り切ることができ、ある意味吹っ切れて、自分の在り方を見出すことができたんだと思います。

山口去年の1月にライフストーリーのインタビューをしたときは、KONAをあきらめて、治療士として仲間のサポートに回ろうかと思っていたらレギュラーに昇格したので、ここからもう一度やってみようと思い始めたと語っていました。

2020年、フレンドからレギュラーメンバーに昇格を果たした木家さん。コロナ禍を超えて、TKも目を見張る変化・進化をとげた

TK言い訳を作って自分で納得していたのが、今は自分に忠実に生きていますよね。だからキラキラしているのが感じられる。そういうワクワク感、キラキラ感というのが人間には大事だと思います。そういう人としての在り方の変化が一番印象的だったのが木家さんです。


理想を追求している人は応援される
ということを教わった

TK山口さんが印象に残ったのは?

山口ライフストーリーのインタビューでメンバーの人生をひとりずつ掘り下げたんですが、それぞれドラマがありましたね。

ストーリーとしては小濱靖典さんの話、高校・大学時代の親友の死というのが衝撃的で、涙が出ました。

KONAチャレメンバーのライフストーリーインタビューでは合計15人の人生をひとりずつ掘り下げていった山口さん(写真左)。身近な人の死をきっかけに挑戦する人生を選ぶに至った小濱さん(同右)のストーリーには思わず涙した

マッキー(牧野星)さんは、家族との関係性が印象的でした。トライアスロンにかける時間がすごく多いのに、娘さんや奥さんに愛され、応援されている。

「なぜ応援されるのか?」と考えたとき、もちろん家族サービスもちゃんとしているのかもしれませんが、「頑張ってる人」と「目指してる人」の差なんじゃないかと思ったんです。

仕事でもただ頑張っているだけでなく、「この会社をこういうところまで押し上げたい」といった目標をしっかり持って取り組んでいる人や、会社の枠を超えて業界のためになることを発信している人はまわりから応援されます。

マッキーさんもただ頑張っているのではなく、KONAという目標や、自分の人生の理想に向き合って追求しているから応援されるんだろうなと。

KONAチャレメンバー間はもちろん、ほかの仲間や家族にも「ハッピーをまき散らしている」。TKをしてそう言わしめるマッキーこと牧野さん(写真左端)

TK好き放題やっていてもまわりにポジティブな影響を与えていればいいんです。逆に好き放題やるためにネガティブなものをまき散らしたら、家族も「やめてよ」と言うでしょう。本当にやりたいと思ってやってる人は、本気度が自然と伝わるものです。

山口私もKONAチャレのスタート時は、自分からやりたかったわけではなく、巻き込まれるかたちでトライアスロンを始めたので、最初は家族に言い訳していたんです。

しかし、途中から「KONAに行きたい」と真剣に思うようになり、真剣に練習しているので、妻と子どもも納得して送り出してくれるようになりました。

マッキーさんもトライアスロンと真剣に向き合うことで、家族を幸せにしているんでしょうね。

TK家族だけでなく、トライアスロン仲間とか、あらゆるところにハッピーをまき散らしている(笑)。

山口それはある意味KONAチャレの神髄でもありますよね。ただ自分たちが強くなって3年でKONAに行けるかどうかだけでなく、まわりを幸せにするためのチャレンジ、まわりにポジティブなものを発信するためのチャレンジだということ。

プロジェクトの最初に竹谷さんと仲村の対談で発信したいと言っていたこともまさにそれです。

TK目指すことで自分の中に何が起きるのかというと、内省と実行の連続なんです。

目指している目標がある人は、「今自分はこうだから・こうなるために・こうしなければいけない」ということを常に明確にしながらそれを実行していく。実行してはまた自分の状態を検証し、必要なことを考え、実行する。それを何万回何億回も回すことで内省力が磨かれます。

内省力が磨かれれば、そこで得たものを他のことにも生かせるようになります。つまり、ただ目指すだけでなく、目指すことによって自分がどれだけ磨かれているかどうかが大事なんです。

トレーニングでただ水泳が速くなったとか、FTP値が上がったとかではなく、内省力が高められているかどうかで、人生の輝きが変わってくる。KONAもトライアスロンも、自分を磨くための手段であって、ただ速いとか遅いが問題なのではない。

山口目標を設定して何が必要かを考え、実行し、検証しというサイクルを回しながら、自分を向上させていくというのは、ビジネスもトライアスロンも同じですね。私も竹谷さんとトレーニングをする中で、たくさんのことに気づき、それを実行しながら磨かれてきました。メイクスではトライアスロンを始める社員が増えてきて、私が変わったのを見て、刺激を受けながら頑張っています。

サラリーマン・アスリートからプロ転向、アジア王者、オリンピック出場。そして、MTBの選手として現役引退後もトライアスリートとして内省力を磨き続けるTK

今のTKを形成した人生の転換と
自分をポジティブに変える行動の大切さ

山口内省を繰り返しながら自分を磨いていく竹谷さんの在り方は、いつどこで形成されたんですか? もともと幼少期からそういう人だった? 

TK完全に大人になってから形成されたものです。もともとは特にやりたいことも目指すものもなく生きていました。変わったきっかけは私が23〜24歳のとき父が46〜47歳で亡くなったことでした。「人は死ぬんだ」ということに直面し、「少なくとも父が死んだ歳までしっかり生きなければ」と思った。

それからは常に「どっちならポジティブに、言い訳しないでやれるか」と考え、ポジティブなほうを選ぶという生き方をするようになった。選んだらやらないと次のステップに進めないからやりきる。それを繰り返していると、実際にそういう人になっていくんです。

山口選択してやりきることを繰り返しながら、今の竹谷さんが形成されていったんですね。

TKそういう決断の下にマウンテンバイクという競技に取り組み、オリンピックに行くことをターゲットに設定したんです。

設定したら能力を身につけないといけない。能力を身につける課程で内省を繰り返しながら、今活用している具体的なやり方を身につけていきました。

サバイバルの火起こしみたいに、やり方を身につけないと死んでしまうから身につけていった。そういうことを繰り返していると、自然とこういう人間になってしまうんです。

山口そうやって身につけたものがあると、何をやっても成功するでしょうね。

TK何をもって成功とするかというのはありますが、何をやるにしても取り組み方というのは変わらないですよね。新しいことをやるときにも応用できる。

たとえば私はトライアスロンを始めたとき、ほとんど泳げなかったんですが、バイクで身につけたやり方をスイムに応用していきました。引退後に始めた仕事や今新しく開始しているプロジェクトでも同じです。

山口KONAチャレを引っ張ってくれたのが竹谷さんでよかった。「夢は現実に変わるか?」というテーマは竹谷さんの生き方そのものだったんだなと改めて思いました。

TK夢は現実に変わるんです。ほんとに。

山口KONAチャレメンバーで言うと、岡田健士朗さんが自分を変えて、実際にKONA出場権をゲットしましたね。

TK彼は過酷な仕事環境で、若くしてフラストレーションが溜まる人生を送っていて、自分がやりたい方向に生き方を振り切っていいんだという確信がもてなかった。

山口それがKONAチャレを通じて変わり、自分をより良くするようなメンタリティーが備わってきた。仕事も生活環境も変えてKONAをとることができました。

TK人間は動かないと変わらないんですね。ただ「変わりたい」と思っているだけでは変われない。無理矢理でも動き出したら変わっていける。その最初の一歩をどう踏み出すかが大事です。

2019年のIM台湾で、見事KONA出場権を獲得した「ケンケン」こと岡田健士朗さん。その結果もさることながら、取り組む姿勢にも大きな変化が見られたひとり

人の本質につながるチャレンジは
これからも続いていく

山口KONAチャレというプロジェクトは3カ年で一旦の区切りを迎えますが、人生の本質につながるチャレンジは終わることはないということがわかりました。

ここで出会ったメンバーはもちろんチャレンジを続けるでしょうし、これきっかけに理想を追求するアスリート、本気でトライアスロンに向き合う人が増えていったらいいなと思います。

KONAやアイアンマンには、出たことがない人でも、すごさがわかる特別な何かがあります。稲田(弘)さん(※KONA最高齢完走の世界記録をもつ88歳のアイアンマン)がKONAのゴール前で泣き崩れるシーンなんかは、トライアスリートだけでなく広く人の心を打つでしょう。

TK誰もが将来の稲田さんになる可能性があるわけですからね。KONAやアイアンマンが、ポーズや流行りではない本気のチャレンジ、小さなチャレンジの積み重ねが生み出すものを確かめる場になればいいなと思います。

山口結局、今日の最初に出た話に戻りますね。人生の本質につながるチャレンジを毎日コツコツ続けることで、人は輝くことができる。

TK小さなチャレンジを継続して、いつでもKONAに行けるアスリートになるという生き方には本来期限というものはないですからね。

そういうアスリートが増えてきたら、すでにKONAに行っている人もさらに頑張らないといけなくなるかもしれない。私も含めて誰もが日々の取り組みをコツコツ積み重ねていくしかありません。

山口あらためて3年間ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

レースのフィニッシュは次なる挑戦へのスタートライン。KONAへのチャレンジも次なるステージへと続く。3カ年プロジェクトの集大成としてKONAに出場するメンバーたちの戦いの行方はもとより、さらにその先、KONAチャレの新展開にも、乞うご期待!
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