竹谷賢二さん×MAKES仲村周作代表

私たちはなぜKONAに挑む人たちを応援するのか?

これは2020年に終了したKONAチャレンジ1期の記事です。最新情報はこちら

ロングディスタンス・トライアスロンの世界最高峰レースIRONMAN World Championship(通称KONA ※開催地が米・ハワイ島コナであることによる)に初出場を目指すアスリートたちの挑戦プロジェクト、KONA Challenge supported by MAKES(KONAチャレ)が今年4月にスタートした。そこでまず、KONAにチャレンジする意味、そこで大切なものなどについて、自身KONAを目指すトライアスリートでもあるMAKESの仲村周作代表と、プロジェクトリーダーの竹谷賢二さん(TK)に語ってもらった。

KONAの常連と挑戦者の
出会いから生まれたプロジェクト

KONAチャレというプロジェクトが生まれたきっかけは?

仲村 私自身去年トライアスロンデビューしたんですが、竹谷さんにバイクのプライベートレッスンをお願いして毎週一緒にバイクに乗る中で、色々なことを話すようになりました。元々MAKESは「心と体の健康寿命100歳創り」をテーマに、より多くの人が元気に長生きする社会の実現に貢献していきたいと考えてきました。スポーツというものは健康寿命100歳を実現する上での一つのプロセスだと考えていて、その中でトライアスロンを通じてもっと魅力的なスポーツとの関わりかたができないかと、竹谷さんとあれこれ話をする中から生まれてきたのがこのプロジェクトです。

仲村 周作 KONAチャレをサポートする「MAKES」(株式会社メイクス)の代表取締役。取引先のお客様からアイアンマン(IM)の話を聞いてインスパイアされ、2017年5月のホノルル(51.5km)でレースデビュー、同じ年の12月にはIM西オーストラリアを完走している。これまで殆どスポーツ経験がなく、本格的に打ち込むのは初めての経験。2018年はIMケアンズ、IM  バルセロナなどに参戦予定。群馬県出身、1979年10月生まれ。

竹谷(以下TK) 企業がスポーツと関わるかたちとしては、大会やプロ選手のスポンサーになるというのが一般的ですが、アマチュアのチャレンジを応援するプロジェクトはどうだろうと思ったんです。Triathlon Luminaには、ビギナーのトライアスロンデビューを支援するチャレンジ企画(木更津トライアスロンチャレンジ)がありますが、(すでに競技経験のある)トライアスリートに興味をもってもらうには、誰もが憧れる最高峰の大会KONAにチャレンジするほうが、アスリートにとって興味深いはずです。

仲村 私自身、去年取引先の方からアイアンマンに出場しているという話を聞き、初めてアイアンマンやKONAの存在を知ったんですが、「かっこいい! 自分もアイアンマンに出たい!」と思いました。

そのとき私は毎晩飲み歩く生活を続けていて、体重は78㎏ありましたが、トレーニングをスタートしてから生活が一変し、体力がどんどんつき、身体もどんどん変わっていきました。去年のうちにホノルルトライアスロンでトライアスロンデビューして、ハーフアイアンマン(IM70.3)、西オーストラリアでアイアンマンにも出場しました。悪天候でスイムが中止になりましたが、想定よりも良いタイムで完走できました。

竹谷 賢二 マウンテンバイク競技のオリンピアンで、現役引退後はトライアスリートとしてKONAに 6年連続出場している。KONAチャレのプロジェクトリーダーとして、メンバーたちへのアドバイスを手がける。
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TK 一緒にトレーニングしているうちに、どんどん走れるようになってきて、設定タイムもどんどん上がっていきましたよね。

仲村 毎朝5時〜6時に起きてトレーニングするのが楽しくてしようがない。どんどん健康になって、心も満たされる。脳も活性化して仕事にもプラスになりました。これなら年を取ることに対して前向きになれる。MAKESが目指す健康寿命100歳社会への貢献にもつながるので、ぜひ広げたいと思いました。

TK 私はKONAに6回連続出場していますが、その魅力は世界で最も高いレベルでトライアスロンをやっているアスリートが集まる大会だということです。ただし、彼らは決して特別な人ではない。やるべきことをちゃんとやっている人たちです。私も含めて彼らは1年間どれだけやるべきことができたかを自分に問うために出場する。何回出てもKONAはチャレンジの場なんです。

仲村 私も最初は「アイアンマンで12時間切れたらすごい、そこを目標にしよう」と考えていました。しかし、やっているうちに、もっと先まで行けると感じるようになり、今回のプロジェクトでメンバーの皆さんと一緒にKONAにチャレンジすることにしました。

KONA Challenge プロジェクトの概要

KONAに初めて挑戦するアスリートが、3カ年計画で2020年のIRONMAN World Championship出場を目指す。2018年春にレギュラーメンバーを公募し、300人の応募者から12人を選出。竹谷賢二さんがプロジェクトリーダー、トライアスロンの雑誌・Webメディア・大会・練習会などを運営するTriathlon Luminaが事務局となり、提携するSPORTS SCIENCE LAB(科学的運動能力測定)、AQUALAB(スイムのフォーム改善)、 R-body(フィジカルコンディショニングの指導)、Endurelife(バイクフィッティング、フォームチェック)などがそれぞれの設備と専門ノウハウを生かしてサポートする

メンバーは3カ月ごとに4施設でデータ測定やフォームチェックなどを受けるほか、大会参加計画、年間トレーニング計画、トレーニング実績などを竹谷賢二さんと共有し、問題点の把握や改善策などを一緒に考えながら、3年後に向けてベストの努力を積み重ねていく。

各メンバーのチャレンジは1週間単位のトレーニング進捗や、3カ月に1回の定期チェック、出場レースの結果などすべてWEB上に公開され、一般のトライアスリートも、メンバーのチャレンジを追体験し、レベルアップのためのノウハウを学ぶことができる。

4月30日に開催されたキックオフ・ミーティング(第1回フィードバックMTG)の模様などは本サイトおよびTriathlon Lumina WEBマガジンなどで順次公開します。

バラエティ豊かなメンバーのチャレンジが
多くのアスリートの参考になる

KONAチャレをスタートするにあたってこだわった点は?

TK まずメンバーの選考では、現時点で能力的にKONAに近い人ではなく、3年で伸びる可能性の大きい人を選びました。必要条件としたのは「絶対にKONAに出たい!」という意欲があること、そのために最低でも週10時間以上のトレーニング時間が確保できることくらいです。

また、メンバーのバリエーションにも配慮しました。男性女性、年代、まだ初心者だけどある種目だけ突出した能力がある人や、アイアンマンにたくさん出ているけどKONAに出るにはまだ力のギャップがある人など、色々な個性をもつ人がいたほうが、それだけ多くの人の参考になるからです。

このプロジェクトの目的は、参加メンバーがKONAに出るというだけでなく、そこまでの3年のプロセスを多くのトライアスリートに見てもらい、そこから多くの学びを得てもらうことなんです。

仲村 私もアイアンマンで12時間切りを目指したとき、どうすればそれがクリアできるのかノウハウがなく、困った経験があります。KONAに出た人のブログなどを見ても、日々3種目どんな練習をしているのかまではわかりません。色々なタイプのアスリートが3年間にわたってやっていくことを公開すれば、すごく参考になるでしょうね。

TK 3カ年計画というのがポイントです。1年ではもうすぐ行ける人のチャレンジになってしまいますが、3年なら成長物語になる。3年かけてこうやったら行けたという人が出てくれば、KONAに出ることが「夢」でしかない人も、「自分も出たい」と思い、行動に移すかもしれません。

今回のメンバー募集では短期間に約300人の応募がありましたが、このプロジェクトが進んでいくにつれて、さらにKONAを目指す人の輪が広がっていくでしょう。その中からメンバーの成長を参考にしながら成長し、KONAに出場する人が出てくるかもしれません。それこそがこのプロジェクトの目的です。大切なのは変化。これからメンバーに求められるのも変化です。二日酔いの生活からの脱却でもいいし、朝早起きして運動するようになることでもいい。3年間でどれだけ変われるか。変わることがすばらしい。

仲村 私もどんどん変わっています。去年竹谷さんと最初にバイクに乗ったときは、ドラフティングで一瞬36㎞/h出しただけで感動しましたが、翌日脚がパンパンになりました。それが今は普通にその速度を維持して走れます。

TK トライアスロンはライフスタイルスポーツですから、生活を良い方へ変えていくこともその中に含まれていると言っていいでしょう。

仲村 会社の入社試験の面接で学生に「趣味を仕事と両立できますか?」という質問をされることがあるんですが、自分がトライアスロンを始めてからは「意志の問題です」と自信をもって言えるようになりました。時間というのは仕事もプライベートも会社から与えられるものではないですし、時間が余っているから趣味ができるというものでもないですよね。

TK トライアスロンで重要なのは自分をコントロールできる能力ですが、時間を作り出せることもその一部だと思います。

仲村 アスリートとしてKONAという目標をもつことで、朝ワクワクしながら起きることができるのがまず幸せです。毎日ワクワクしながら変わり続けて3年後、KONAでレースの朝を迎えられたら、もう最高でしょうね。

TK 私はサラリーマン時代にサイクルスポーツを本格的に始めました。選手としては遅いスタートです。2足のわらじをはいてトレーニングに取り組みながら速くなっていき、マウンテンバイク(MTB)の日本チャンピオンになりました。そして、30歳でプロになりアテネでオリンピックに出場しました。

アマチュア時代からトレーニング方法を研究する一環としてトライアスロンの雑誌も読んでいましたから、アイアンマンのことも知っていましたし、いつかKONAに出たいと思っていました。MTBのプロを引退したときにトライアスロンをやりたいと考えたのはごく自然な流れでした。そのときの私は全く泳げませんでしたから、そこが大きなネックでしたが、コツコツ練習するうちに少しずつフォームが改善され、今では宮古島で言うと1500人中150位くらいでスイムを上がれるようになりました。ランも体力、筋力で走っていたのが、少しずつスキルを磨いて、速くなってきましたし、今でも進化中です。

自分でもこういうふうに自分を変えてきたという経験があり、今も変えつつあるので、KONAにチャレンジするメンバーの仲間として、変化していくためのアドバイスもできるし、一緒にチャレンジしていきたいと思うんです。

メンバー自身が考え、自分を進化させていくのをサポートする

具体的にはどのようなサポート、指導をしていきますか?

TK 主役はあくまでメンバー一人ひとりです。現時点で自分がどのレベルにあるか、3年後のKONAに出るために、3種目の力をどのくらいまで高める必要があるか、そのために何をすべきかを自分で考え、実行していく。

途中経過は出場するレースの他、3カ月ごとにSPORTS SCIENCE LABAQUALABR-bodyEndurelifeの4施設で計測を行い、運動能力や体の状態を評価しながら、やり方を修正・改善していきます。そこで大切なのはメンバー自身がそれを分析・評価することです。私もアドバイスはしますが、医療のセカンドオピニオンのようなものです。KONAに出るために自分を変えていくというのは、ただ与えられたメニューで強くなることではありません。KONAに出るためにどうすべきか自分でわかるようになっていくことです。

仲村 私はメンタルが弱いのでひとりで、パーソナルコーチをお願いしてひたすら食らいついていくという練習をやってきました。しかし、KONAチャレンジのメンバーになったということは、自分で考えながら自分を変えていく必要があるわけですね。

TK コーチが決めたトレーニングを実行しているだけでは、コーチによって作られたアスリートになってしまいます。KONAに出られるアスリートになるためには自分で考え、実行できるようになることが必要です。

仲村 まだ初心者ですが、こうすればこのくらい強くなるのではないかと自分なりに仮説を立て、自分で1年・2年・3年の計画を立て、定期的に検証しながら軌道修正していくわけですね。簡単ではありませんが、これを継続していくことで成長していける。その先にKONAがある。

TK KONAに行くためにはKONAに行ける人になる必要があるわけです。それは常に今の自分を分析しながら、計画を修正し、トレーニングを改善していけるようになること、KONAに行くための最適な選択ができるようになることです。それができるようになれば、たとえば雨でバイクに乗れないなど、予期せぬ事態が起きても瞬時に計画を組み換えることができます。

仲村 色々な人のやり方を知ると、自分がやっていることの意味が全く違う観点から見えてきたりします。自分の仮説も計画もそのたびに修正が必要だなと感じるようになりました。

TK 3年間変える必要のない計画などありえません。大切なのは常に今の自分と3年後のKONAをイメージして、その場、その時点からの景色を見ることです。進んでいくにつれて自分も変わっていきますし、刻々状況も変わっていきます。大切なのは常に今何をやるのがいいか判断できることです。計画はあくまで基準であり、それを自分で修正しながら、KONAに行ける自分へと自分を変えていく。そういう人になれたら、柔軟にフリーハンドで常に最適な設計図を描けるようになるでしょう。

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