2020年10月に行われるはずだったアイアンマン世界選手権——KONA。新型コロナウイルスの影響で、5月中旬に「2020年2月6日に延期」されることが決定した。最大の目標を達成しながらも、レースが開催されるか分からない不安や焦りの中でトレーニングを続けていた4人の卒業生たち。今の心境やレースの対策について、オンライン座談会でたっぷり語ってもらった。
【トレーニングパートナー】
孫崎虹奈
【卒業メンバー】
東度久美さん
小泉邦明さん
(2019年アイアンマン韓国中止後の抽選で獲得)
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KONAチャレメンバーのコロナ対策:
https://lumina-magazine.com/archives/news/18162
―KONA決定から半年近くが経ちましたがどのように過ごしてきましたか?
台湾後は、燃え尽き症候群になってしまって……。2019年の10月頭~12月頭までトレーニングしていなくて、体重も増加して、年末時間ができたときにやっとトレーニングが積めた感じですね。その後、このような状況(コロナ)になってしまって、私はイベント関係の担当なので、1カ月くらいお休みのようになってしまったので、前向きに考えればそこで練習量が積めました。皆さんどうですか?
台湾が予想より1時間くらい遅いタイムだったので、ギアを入れ直した感じです。今は仕事が変わり、地元の愛知に戻って、在宅で仕事をしています。環境が変わって、1日3時間くらい練習時間がとれるようになりました。今のところ、台湾のレースくらいまでは戻ってきたかな。9月の佐渡とその翌週の伊良湖にもエントリーしているので、大会が開催されることを願いたいですね。今は、そこに目指しています。
僕はラッキーで獲れちゃった(抽選)のでみんなと状況が違うし、なんとも言えないけれどね。早い時期に決まったので、KONAをゴールとしてトレーニング計画を見直しました。夜していたトレーニングを朝にシフト。出社前1時間~1時間半くらいやっています。できるときは仕事終わりにもやるという2部錬になりました。休日は2時間~半日、できれば1日やっています。
あとは、昨年の12月のアイアンマン70.3厦門がラストレースだったんですけど、その前から足を故障していて、それをちゃんと治さなきゃいけないな、と。R-body(KONAチャレサポート施設)に相談して、整形外科を紹介してもらいました。それを基にメニューを組んで、コンディショニングに取り組み、少しずつ良くなってきています。呼吸器系も問題があったので、3月に鼻の手術をして改善しました。
故障を直して、身体のバランスを整えた期間ですね。
台湾終わってから、年内は1カ月くらいはOFFにして親知らずを抜いたり(笑)、ずっと気になっていた身体のことをやりました。
大事大事(笑)
9月の台湾から、次のKONAまで1年間あるので、練習環境とか思い切って変えるなら、今だと思ってかなり悩みました。今どおり、ひとりで積み上げてきたものだけでは足りないな、と感じていて、人の力を借りないと次の成長はない、と思うようになりました。いろいろな人の縁もあり、スクールなどに体験に行って、情報収集して、自分のルーティンの中にちゃんと組み込めるかな、と考えました。スイムは今までとは別のスクールに決めて、バイクはLuminaの朝バイク、ランはパーソナルレッスンを受けることにして、年明けから始めましたが、今の状況でストップしちゃってますが。
KONAまでというよりもKONAで結果を出すということに目標が変わったので、そういう意味で今までと環境を変えるというのは、私たち全員に共通していることかもしれませんね。
練習は、生活や家族、仕事の状況を見て、そのときどきに合わせてルーティンを組むことが大事ですよね。思い切って変えていかなければならない。でも、全部プラスオンにはできないので、何かをマイナスしなくてはならないし、それを慎重に検証しました。たとえば、朝、始発もない中で移動できるかな、とか、家族は本当はどう思っているのかな、とか。
パフォーマンスのことだけで言うと、今は全然。2月くらいからどこか上がらない自分がずっといて、今はぱっとしない。練習量が減っているわけではないし、落ち込んでいるわけではないのに、なぜか身体が全然ついていかないところもあって、2月3月は悩ましい時期でした。
だけど、プライベートで言うと、子どもたちと走るという新しい習慣ができて、そういう意味では充実しています。焦りもあるけれど、受け入れて前に進んでいる感じですね。
―コロナ禍で十分なトレーニングができない中でどう過ごしていますか?
僕は普通に出社しているので、そんなに変わってないかな。トレーニングを朝にしたことと、コンディショニングの時間を長めにとっていることくらいでしょうか。R-bodyが提案してくれるトレーニングは、フリーウエイトなので、ひとりでもできるんです。
バイクはずっとZwiftで1時間くらい。休みの日はアイアンマンのバーチャルクラブをやっています。バーチャルレースでゲーム性が高いんだけど、時差の都合もあって、早くスタートすると上位に行けるんです(笑)。この前、3位入賞しました。それがモチベーション維持につながっていますね。
どんどん参加者が増えるから、早い段階でスタートすると上位に行ける可能性があるんですよね。
そうです(笑)。最終的には50番とかそうなっちゃいますけれどね。
バーチャルはコロナにならなければ、手段としてでてこなかった。ここまで浸透しているのは、本当にみんな順応が早いな、と思います。
その辺はさすが順応性が高いトライアスリートだな、と思いますよね。
そう、前向きに考えてもいいのかな、と。実際に泳げないことくらいかな、できないことって。
もともと僕はバイクはインドア派なので、そこまで変わらないですが、ランは大会がなくなっちゃったんで、トレイルで心拍と地足を鍛えています。筋力的にも強化できるし、気分転換にもなります。スイムはバランスボールに乗りながらゴムを引いたりして、トータル的に時間は増えました。仕事が変わったのも大きいかな。
仕事は何してるの?
いくつかやっているのですが、そのうちのひとつで子どもたちに陸上教室で教えていて、そこで自分の知識をアウトプットすることで、違うひらめきがあるんです。それを自分のトレーニングに生かすことができています。
たとえ、コロナが完全終息しても元通りにはならないと思うんですよ。AFTERコロナよりもWITHコロナになると思っています。だから、練習も新しいやり方を考えないといけない。ひとりで行うので難しいと思うのがスピード練習かな。
先ほど、小泉さんが言っていたように、バイクはZwiftなど環境があるけれどジョグ以外、ランの追い込み、インターバル走とかはひとりでははなかなかできないですもんね。
最終的には、そういうことがひとりでできる人が強いのかな、と思うけれどね。今までは、レースがやるかどうかわからなくて、できることを積み上げるしかなかったけれど、目標がはっきり決まったから(編集部注:座談会の直前にレース日が決定)、今度は逆算していく必要がありますよね。どこかで自分をもう一度きちんと律して、スケジューリングすることが必要になります。
―KONAの本選対策として取り入れていることはありますか?
アイアンマンKONAの動画をずっと見てる。
見てる見てる。
そこで走っているイメージをして実際にランをしてたり、レースで走るときのシミュレーションをしています。
僕は長友佑都選手が使っているような体幹トレーニング用のマットを取り入れています。スピードスケートの選手の陸上のトレーニングで使われるようなもので、摩擦の低いマットで、足や腕を滑らせながらトレーニングするんです。こういう時期だから、いろいろな方法やグッズが試せて面白い。
本を何冊か読んでいてオススメがありますよ。『初めてのボディマッピング』は、今まで動き方など勘違いが多かったけれど、それを理解できました。それと併せて、故障していたこともあり、『筋肉の仕組み』とか『スタンフォード式疲れない身体』など改めて身体のことを考えるのに役に立ちました。
本なら、メンタル系の『SPORTS SLUMP BUSTING~スランプをぶっ飛ばせ!』を読みました。外に出られないときとか、モチベーションを保つためにどうすればいいのかなどが分かりました。
―KONAの本選対策として取り組んでいることは?
補給食を見直しています。Luminaの補給食特集(Lumina2019年7月号)を読み直したりして、自分に必要なエネルギー量や食べやすいものなどの検証を継続してやっていこうと思っています。
竹谷(賢二)さん(プロジェクトリーダー)が「KONAのコースはアップダウンしかない」と言っていたので、バイクもランも上るトレーニングをしっかりやっていこうと思っています。スイムは苦手ですが、KONAはスタート地点まで結構泳いで行ってのフローティングスタート。3.8㎞ではなくて、実際は4.5㎞くらい泳ぐつもりで泳ぐようにしようと思っています。
まだ何も対策していません。10月のつもりでいたから、7月の皆生で調整しようと思っていたのですが、そのプランはボツ。冬を超えてすぐのレースは初めてのパターンです。普段のシーズンだと、海に行く回数を増やして、海の感覚とプールでの感覚をすり合わせて、実戦練習を積んで、いざレース。それがしばらくできないですよね。こうなったときに、どうしたらいいのか、が分からないのが正直なところ。そういうことを見据えた夏の過ごし方をするしかないけれど、今はノープラン。
同じですね。今対策と言われてもどうしたらいいのか、悩みます。
恐らく、ノーレースでKONAになっちゃう。秋口にもう1つレース出られればいいけれど……。シミュレーションをどうすればいいかがすごく不安ですね。短いトライアスロン人生ですが、初めてのパターンです。
でも、そんなことばかり言っていても仕方ないし、こういうパターンのときは何ができるのか考えてやならければならない。数年後に、「ああいう年もあったな」と笑い話になるくらいでいいんですよ。分からないことばかりだから、まずは真っ新な状態でやってみよう、と。何がベストか分からないので、初の試みだと思ってやっていくしかないと思っています。
たとえば、夏に海練ができたとしても、冬を越しちゃうので身体がもどっちゃいますよね。だから、通常のシーズンとは別と考えて、夏はなるべく疲労を貯めないで、休みながら距離を積んで、秋口くらいからスピード練習を入れつつ、家じゅう窓閉めて暑さ対策をする、というプランかな。2月って一番日本が寒くなってくる時期なので、外乗りが減っちゃうのかな、という気はします。
―KONA本番でのイメージを教えてください。
ゴールタイムという数字だけを追いかけるのではなくて、自分が納得するレースがしたいですね。言い訳しないで済むような、終わった後に、悔いのない展開をしたい。
いつもだいたい言い訳をしてるから(笑)。特に今は、環境は変わっちゃったので、言い訳しちゃいそう。泳げなかったとか。だから、きっちりとプランを立てて、KONAチャレメンバーとして恥ずかしくないレースをしたいと思っています。
元々の目標サブ10(総合タイムで10時間切り)、それは絶対にクリアしないといけない条件だと思っています。あとは、KONAのレースで気持ち的に燃え尽きないようにしたい。小泉さんと同じで言い訳はしたくないです。
今まで思い描いていた10月とは、絶対に違う結果だと思う。前例のないレースということ自体がすべて経験値として自分に残る。日本人では、初めて2月の世界選手権に出た人たちになるわけですよね。「どうやって冬を超えたのか?」などをきちんと話せることが、のちにすごく大事になると思います。自分がやってきたことを大事に、しっかり目的意識をもって、これも仮説と検証のひとつとして、見ていきたいなと思っています。
せっかく時間があるので、絶対ゴールで後悔したくないって気持ちがあって。これだけ時間があったら、妥協する部分は一切ない。不安要素は全部消していきたいです。レースやトレーニング時の自分の判断は良かったと思えるようにしたいです。今のトレーニングもレースでも一瞬一瞬を後悔したくない。当たり前のことを当たり前にやっていくのが今の対策かな。目標以上のことは求めない、目標通りのことをしっかりしていくこと。
あとは、ゴールするときは笑顔でゴールしたいというイメージがあります。倒れ込んで、精根尽き果てた感じではなくて、ゴール後も元気な身体でハワイの美味しい物を食べたいです!