新型コロナウイルスの拡大により、トライアスロンの大会が世界中で中止になる中、IRONMANの主管企業WTCは、ステイホームの環境下でもインターネットを通じて参加できるアイアンマンレースを展開している。それが「IRONMAN VR(Virtual Racing)」だ。
IRONMANの公式VRサイトIRONMAN VIRTUAL CLUBが運営し、記録の集計・管理を行うので、自分の成績を世界のライバルたちと比べることができ、アイアンマンレースに参加したときの緊張感を味わうことができるところに大きな特長がある。
KONAチャレンジではすでにプロジェクトリーダーのTK(竹谷賢二さん)、レギュラーメンバーの牧野星さん、フレンドメンバーの今井達也さんらが、このIRONMAN VRに参加している。
ここでは、8月16日に開催されたKONAチャレンジ・ミートアップ(ネット会議)で行われた、TK、牧野さんによるIRONMAN VR紹介をもとに、必要な器材や参加手続き、レースのフォーマット、参加するメリット、活用法などをわかりやすく解説する。
バーチャルレースでスロット獲得!
リアルのレースと混在する時代に?
IRONMAN VRは世界的に新型コロナウイルス感染が広がった3月にスタートし、リアルなレースが開催できない状況下で、レースのような緊張感・集中力が保てるアクティビティとして参加者を増やしている。
IRONMAN5150(オリンピックディスタンス)とIRONMAN70.3(ハーフアイアンマン)、スプリントディスタンスのバーチャルレースが、ラン・バイク・ランのデュアスロン形式で毎週金曜〜日曜に開催され、8月16日現在まで計19回開催されてきた。
大体、4週のうち5150が3回、70.3が1回という頻度で行われている。たとえば7月10〜12日、17〜19日は5150、24〜26日は70.3、7月31〜8月2日は5150が開催されている。
TKこれまでレースはいかに人を集めるかが前提になってきましたが、新型コロナによって人を集めることができない状況が生まれ、人を集めないでいかにレースをやるかを考える必要が出てきました。
新型コロナの感染状況は先の予測が難しいですが、これからの時代はリアルなレースが開催できなくても、バーチャルレースで成績を競い、結果を評価するというレースのあり方が一般的になるかもしれません。
すでにIRONMAN VRでは、所定のフォーマットのバーチャルレース参加選手を対象に、成績によってIRONMAN5150とIRONMAN70.3のワールドチャンピオンシップのスロットを付与するポイントランキングをスタートしています。
つまりバーチャルレースがリアルレースのクオリファイレースになっているのです。今後はバーチャルレースの成績がKONAのスロットにつながる可能性もあります。
スロットが獲得できるのは
IRONMAN VR Championship Series
IRONMAN VRには、条件がゆるいものから、必要な器材やアプリが限定されたり、データが細くチェックされたりするものまで、いくつかのフォーマットがある。
条件がゆるいものは、気軽に参加できる反面、計測の緻密さに欠けるため、参加者が不正を行ってタイムを短縮してもチェックできないといった問題が出てくる。
TK公平性を保つためには、どうしても明確なレギュレーションが必要になります。
IRONMANの51.5と70.3のスロットを獲得できるのは、IRONMAN VR Championship Seriesというカテゴリーで、最も緻密なルールで公平性を確保しています。
たとえば、ランの獲得標高がマイナスになっているといったこともチェックされ、クレームがつき、データとして認定されないといったことが起こりえます。
必要なツールは
計測デバイスとスマートトレーナー
IRONMAN VRは、参加者が自分でランとバイクのタイムを測り、そのデータをアプリに転送することによってタイムを競う。
したがって、PCやスマートフォン以外に、ランのタイムを計測するGPS対応の計測デバイス(ガーミンやスント、ポラールなど)と、バイクのタイムを計測してデータ転送できるスマートトレーナー(ローラー台)が必要だ。
スマートトレーナーはメーカーと機種が指定されているが、海外主要メーカーの機種はほぼ網羅されている。
詳しくはIRONMAN VR Championship Seriesのホームページ参照。
https://app.ironmanvirtualclub.com/en/blog/ironman-vr-championship-series
レースに参加するには
アカウント登録とレースエントリーが必要
まずIRONMAN VIRTUAL CLUBに自分のプロファイルを作成してアカウント登録し、デバイスのアプリをIRONMAN VIRTUAL CLUBのクラウドと同期できるようにアップロードする。
レースは毎週末に開催され、スケジュールは4週間くらい前までに告知されるので、金曜の締め切りまでにレースにエントリーし、自分のデータをそのレースとリンクさせ、所定の時間帯の中で、自分のタイミングでスタート。
レースの距離は、主に以下のふた通り。
IRONMAN5150(オリンピックディスタンス)=ラン3㎞/バイク40㎞/ラン10㎞
IRONMAN70.3(ハーフアイアンマン)=ラン5㎞/バイク90㎞/ラン21㎞
ランはトレッドミルではなく、アウトドアで、 バイクはアプリROUVY(ルービー)上で走る(Zwiftは使えない)。
バイクと第2ランのスタートも自分のタイミングでOK。
ただし、5150、70.3ともスタートから12時間以内にゴールすること。
ゴールしたらそのアクティビティ結果をあらかじめVC内で設定しておいたアプリに保存することでIRONMAN VIRTUAL CLUBのプロファイルに自動で転送・登録。
これでIRONMANのクラウドに自分の成績が登録され、記録として残る。
成績は男女・エイジグループ別にランク付けされ、上位選手にポイントが与えられる。
これも詳しくはIRONMAN VR Championship Seriesのホームページ参照。
https://app.ironmanvirtualclub.com/en/blog/ironman-vr-championship-series
レースをイメージしながら 世界中のライバルと競えるのが魅力
レギュラーメンバーの牧野星さんは、こまで計15回IRONMAN VR Championship Seriesに参加してきた。
牧野星コロナ禍でソロトレーニングしかできない中、高負荷トレーニングがやりづらいので、バーチャルレースをトレーニングとして活用しようというのが、始めたきっかけでした。
10回目まではお試し期間のような感じでしたが、11回目からはレギュレーションが厳格になり、IRONMAN70.3とIRONMAN5150のスロットが獲得できるポイントシステムがスタートしました。
IRONMAN VRの魅力は、バーチャルだけどIRONMANの記録に自分のタイム履歴が残ること。世界中で同じことをやっているエイジのライバルたちがいるんだと想像しながら、レースイメージでできます。
実際には自分ひとりでやっているけど、競うライバルがいることで、集中して頑張ることができます。
回を重ねるごとに、参加者が固定されてきているので、日本人の参加者は現在エイジグルーパーが15人くらい。
自分のエイジでは日本人の2位か3位くらいに入ることができていて、世界でも上位1割くらいに入っている。実際にはありえないことですが(笑)これも励みになっています。
バイクアプリがポピュラーなZwiftではなくROUVYなのは、賛否両論ありますが、公平性確保のためとのこと。
(ROUVYはコースの背景が実写=実際のコース・現地の画像なので)IRONMANシリーズのバイクコースを走ることができるのが刺激的です。
自分が出場したケアンズのコースを走ったときは、見覚えのある景色が懐かしかったし、まだ走ったことがないKONAのコースは「これが話に聞いてきたあのコースか!」という感じで、また格別でした。
バイクコースが毎回変わるので、トレーニングとしてデータを比較するのは難しいですが、レースのようにFTPを指標に走っています。
ランは家の近所のコースを色々試した後、現在は固定したコースで走っているので、データを比較しながらパフォーマンス向上につなげることができます。
牧野星さんのIRONMAN VR活用ポイント
トレーニング計画の中で
ショートやミドルのレースを活用するのと同じ
牧野私の場合はスロット獲得が目的ではなく、あくまでトレーニング計画の一環と位置づけています。
通常、トレーニング計画の中で、ショートやミドルのレースに出て、調整やパフォーマンスのチェックを行ないますが、それをバーチャルなレースで行っているという位置づけです。
自分ひとりのトレーニングではできないスピード強化の手段としても活用しています。
自分でトレーニングを行うよりモチベーションが維持できるので、継続的に行うことができます。
ポイント1 必ず目標を設定してレースをすること
たとえば「ラン3㎞を4分ペース、10㎞を45分切り、バイク40㎞を強度90%キープ」など。
目標を立ててそれをクリアしようとすることで、実際にクリアできてもできなくても、自分のパフォーマンスがチェックでき、課題が明確になります。
ポイント2 目的を見失わないこと
あくまで自分のトレーニングプランの中で行う。「これをやらなきゃいけない」という義務感にかられたり、「毎回良いタイムを出さなきゃ」と考えるのはNG。
バーチャルレースで良いタイムを出すため調整して出るのは、トレーニングプランを崩すことにつながり、本末転倒。
TKにとってのIRONMAN VR
レースと同様に追い込むので頻繁に出場はしない
TK私はIRONMAN VR Championship Series 70.3に出場しました。 自分のタイミングで3種目をひとりで行うのに、リアルなレースのような緊張感があり、レースと同様に集中して追い込むことができました。 普段のトレーニングではどうがんばっても出せないパフォーマンスを出すことができるのがいいところだと思います。
ただし、リアルのレースと同じくらい疲労して、リカバリーに3週間くらいかかりました。
私の成績は現在、IRONMAN70.3のスロット獲得の可能性があるウエイティングのポジションにあります。
トレーニングとして出るならたくさん出場するのもいいかもしれませんが、私の場合は出るからにはレース同様のパフォーマンスが出せないといやなので、そんなに頻繁に出ることはしません。
しかし、レースがない現状で、モチベーションを高めたり、パフォーマンスを確認するためにも、今後バーチャルレースがリアルレースと混在していくかもしれない状況を、体験してみるためにも、1回はやってみて損はないと思います。
(使用器材などの)条件が合わない人は「クラシック・ディビジョン」など規定が厳格でないカテゴリーもありますから、そちらで出場してもいいでしょう。
夏の暑さに注意
時間帯に工夫も必要か
ランは外で走るので、真夏の猛暑日にやるのは身体にダメージが大きくなるため要注意。
牧野スタートから12時間以内にゴールするという決まりなので、私は51.5の場合、土曜の夜に第1ランとバイクを走って、第2ランは翌朝早起きして走っています。
そのほうが暑さを避けることができるし、休養もとれます。
70.3も12時間以内なので、これは週末朝から1日かけて走っています。
フレンドメンバー今井達也さんのIRONMAN VR
IRONMAN VRを毎週ポイント練習として活用し
19レースをコンプリート
フレンドメンバーの今井達也さんは、51.5と70.3あわせて19回すべてを完走。 スロットも獲得した。 しかし、あくまでIRONMAN VRは練習の一環であり、トレーニングスケジュールに入れることで、結果的に毎回出場することになったという。
今井達也普段の練習でラン10㎞やバイク40㎞といった距離を集中して走るのはなかなか難しいので、IRONMAN VRは1週間のトレーニングスケジュールの中で良いポイント練習になっています。
他の参加者のタイムを見て刺激を受け、頑張ろうという気持ちになれる。
結果的に19回コンプリートすることになり、スロットも獲得できました。これはガーミンのトラブルで参加者が少なかったときなので、運も影響していると思います。
バーチャルレースで集中する分、それ以外の練習は少しゆるめにしていましたが、今は猛暑が続いていますし、スロットもとれたので、IRONMAN VRはこれから少しお休みしようかなと考えています。
IRONMAN VIRTUAL CLUBには、レースのほかに「ワークアウト」というのもあり、これも自分で練習するよりモチベーションが上がるので活用しています。
KONAチャレのイベントとして
考えてみる価値あり
最後に、KONAチャレ事務局から、KONAチャレのイベントとしてメンバーみんなで参加してはどうかという提案があった。
TK8月・9月は暑いので、10月がちょうどいいでしょう。IRONMAN VRの70.3が開催される週末に、イベントとして参加するのもいいかもしれません。
10月は延期になったKONAの代わりに、IRONMANが何かイベントを開催する可能性もあるので、その推移を見ながら決めていきましょう。
※その後、IRONMAN VIRTUAL CLUBより本来のKONA(アイアンマン世界選手権)開催時期に合わせ、アイアンマンディスタンスでのバーチャルレースイベント開催がアナウンスされたが、詳細は未発表。
詳細決まり次第、KONAチャレ指定イベントとしても活用を検討していく予定。
また、9月26日(土)、27日(日)には、TKやほかの参加者と一緒に千葉・南房総で70.3(ミドル)の距離の3種目に挑むイベント「泳いで、漕いで、走る! TKトライアスロンキャンプ」も実施決定。
1DAYで上記レース形式のイベントのみに参加することもできるので、こちらも要チェック!