4月28日に開催された「KONAチャレンジEXPO」では、ロングディスタンス・トライアスロンを主戦場にKONAや自己ベスト更新を目指す人から、「いつかレースデビューしたい!」という人まで、トライアスリートの挑戦に役立つトークショーやセミナーが多数開催された。
今月は数あるイベントの中から、KONA(アイアンマン世界選手権)に何度も出場している強豪エイジグルーパーたちによるトークセッションの模様をご紹介。60歳以上のKONA常連たちが、歳を重ねてもKONAに出続ける秘訣を語ってくれた。
プロフィール
宗政義仁さん(72歳)
トライアスロン歴30年。KONA出場8回。兵庫県芦屋市在住。芦屋浜アスリートクラブ名誉会長。2007年、KONAに出場するアスリート、KONAを目指すアスリートのために日本アイアンマンクラブを設立。
松田喜美子さん(71歳)
トライアスロン歴22年。KONA出場9回。大阪在住。日本人で唯一、KONA、エクステラ世界選手権、IM70.3世界選手権に出場する「トリプル」(2009年)という快挙を達成している。
丸知司さん(63歳)
トライアスロン歴25年。KONA出場15回。東京在住。1990年代、低強度トレーニング主体のマフェトン理論で実力が開花し、KONAに連続出場。7年前のバイク事故から5年間リハビリの日々が続いたが、最近復活。
自分に合った環境、トレーニング方法で
無理なく継続する。
―KONAに出続けるために、トレーニングで一番意識してきたポイント、気をつけてきたことは何ですか?
丸トレーニングで一番重視してきたのは「継続性」です。そのためにトレーニングの強度・量の波を作ってレース前極端に減らすようなピーキングはやらず、コンスタントにトレーニングし続けることを心がけています。休養はレース(アイアンマン)の後2週間だけ。KONAの予選とKONAのふたつだけをレースと考え、ほかのレースはトレーニングと位置付けています。
―丸さんと言えば、低強度トレーニング(有酸素トレーニング)を重視する「マフェトン理論」の実践者としても有名ですが。
丸90年代の半ばにマフェトン理論が日本に紹介されて、やってみたら私に合っていたんでしょうね。疲労しないで良いコンディションをキープできる。主要なトレーニング強度の目安を「心拍180拍/分-年齢」(180公式)で計算するので、40代で130(拍/分)台、50代で120台とかなり低めなんですが、マラソンもこれでタイムが伸びたし、安定してKONAに出場できました。今でも基本はこれです。
仲間とのトレーニングで
楽しく無理なく練習を継続
宗政私が大切にしているのは仲間とトレーニングすること。毎週土曜日に芦屋浜アスリートクラブの仲間と汗を流すのが、1年を通じてトレーニングのベースになっています。もうひとつは1年を二期に分けること。5月〜10月はトライアスロン、11月〜4月はマラソンをメインに、月1回レースに参加します。こうすることで、冬も休まず、1年を通じて無理なくトレーニングを継続できます。
―年齢と共にトレーニングの量や内容は変化してきましたか?
宗政歳と共に体力は落ちてきますから、仕事をリタイアして時間はあっても、そんなにトレーニングはできません。今は週10回以上(スイム・バイク・ラン3回以上)、計10時間以上を目安に、コツコツ続けています。やればいいというものではありませんから、できる範囲でやればいいと思います。
ロングではバイクの比重を大きく
松田まんべんなく3種目トレーニングすることが基本ですが、その中でもバイクを重視してきました。ミドル~ロングはバイクの比重が大きいですから。きっかけは徳之島大会(ミドル)のバイクでタイムアウトになったことです。それで時間があって天気が良いとまずバイクに乗るようになった。練習は基本ひとりです。
―バイクの練習量は最大どれくらいでしたか?
松田月2000㎞くらいやったこともありますが、これはポジションを模索していた時期にヒマさえあればバイクに乗っていたからで、普段はそれよりかなり少ないです。ただ、冬はマウンテンバイクに乗るので、それを含めると1年を通じてかなり乗りますね。
―レースは年にどれくらい出ていますか?
松田7〜8回出ますが、そのうちロングは2回です。ミドルとショートはブリックトレーニングと位置付けています。「KONAで表彰台に乗るには、もっと出場レース数を少なくして身体を休める期間を設けては?」とアドバイスされたこともありますが、今のところ変えていません。
栄養には気を配るが、
ストレスになるような制限はしない
―トレーニング以外で気をつけていることはありますか?
宗政一番大切にしてきたのは仲間との交流です。お酒も毎日飲みます。トレーニングでのどが渇きますから、ビールがおいしい(笑)。飲み過ぎないようにしていますが、適度なアルコールは仲間と楽しい時を過ごせる、リラックスできるという利点があると思います。
丸私も365日飲みます(笑)。
松田私も「酒をやめろ」とアドバイスされたことがありますが、やめてません(笑)。毎日飲みます。ビールなら1.5リットルくらい。いつもしてることをやめるとストレスになるので、レース前夜も飲みます。
―食事で気をつけていることは?
宗政いわゆる「ま・ご・わ・や・さ・し・い」ですね。豆類、ごま、わかめ(海藻類)、野菜、魚、しいたけ(キノコ類)、いも類からバランス良く栄養をとる。サプリメントはとらず、自然体でやっています。この中には入ってないけど、肉も食べます。
松田私も食事には気をつけてますね。食べるのが好きで、作るのも好きですから、空いてる時間は大体キッチンで何か料理してます。
―丸さんが実践してこられたマフェトン理論では、栄養についても指針がありましたね?
丸炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質を「40:30:30」の割合で摂るという考え方ですね。90年代前半までは「運動のエネルギー源は炭水化物」という考え方が主流で、脂質はなるべく摂らないという人が多かったんですが、マフェトン理論は持久系の運動のエネルギー源として脂質もしっかりとるべきだとしたところが新しかった。
その後、炭水化物を控えるという考え方が出てきましたが、マフェトン理論はバランス重視ですから、炭水化物もしっかりとります。ただし、寝る前にとらないとか、タイミングは気をつけますが。
歳とともに身体のケアが重要になる
―身体のケアについてはどうですか?
丸50代の半ばまでは特に何もしなかったんですが、7年くらい前にバイクの事故でケガをしたのをきっかけにトレーナーのお世話になるようになりました。今でも2週間に1回メンテナンスしてもらっています。
宗政若い頃はトレーニングだけしていれば体調を維持できていましたが、歳とともにそうもいかなくなりました。特別なことはしていませんが、昼寝・休養とストレッチは意識してやっています。
松田60歳のときオートバイにはねられて腰椎を圧迫骨折したのがきっかけで、トレーナーのお世話になるようになり、その後もメンテナンスを継続しています。トライアスロンを続ける上で一番大切なのは継続ですから、ケガで中断しないために身体のケアをするようにしています。
必要に応じて筋トレなども取り入れる
―最近新たに取り入れていることはありますか?
丸いくつかあります。ひとつは「体幹を中心とした筋トレ」で、これは本を読んで自分でメニューを作成して自宅でやっています。それから小山裕史さんの「初動負荷トレーニング」を、ジムで専用のマシンを使ってやっています。
松田去年KONAでランの後半に身体が傾いてまともに歩けなくなり、情けない思いをしたので、コアトレで体幹を鍛えたいと考えています。やるからにはパーソナルトレーナーについて正しいトレーニングをしたいですね。
宗政今のところレースでトラブルは発生していないので、特に筋トレなどはやらずにきています。しかし、歳とともに腰など身体のあちこちにきしみが出てきていますから、何かしないとまずいとは感じています。
丸60歳を超えると筋力が低下しますし、可動域も狭くなります。落ち込みを防ぐためには何かしないとまずいですよね。体幹が弱ってると感じたのは50代後半に泳いでいて腰が落ちているのに気づいたのがきっかけでした。
それまで泳いでいて苦しいのにタイムが落ちているとか、バイクでDHポジションがキツいとか、色々問題があるのは感じていたんですが、体幹の筋力低下が原因だとわかった。
そこで週2回コアトレをやるようになったら、またフォームが維持できるようになりました。初動負荷トレーニングも確実にフォームに良い影響が表れています。