KONAを目指す挑戦者たちのライフストーリー

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田所隆之さん

KONAチャレが盛り上がれば、
トライアスロンの魅力を広げるエンジンになれる。

KONAチャレ・フレンドメンバーとしてフィードバック・ミーティングや練習会などのイベントに参加するほか、プロジェクト運営の改善にも積極的に提案を続ける田所隆之さん。ときにはレギュラーメンバーを煽りながら、チームとしての雰囲気の盛り上げに大きな役割を果たしている。

プロフィール

たどころ・たかゆき

1988年横浜生まれ、30歳。スポーツメーカー勤務。大学まで横浜で過ごす。小中学校時代はサッカー少年、高校・大学はハンドボール部。2016年関西に転勤し、友達づくりのため大阪のトライアスロンチームChoose to Fight!!に加入。湯原温泉トライアスロン大会でレースデビューした。トライアスロンの魅力にはまり、翌年ITUの世界選手権を目指して51.5kmの8大会に出場し、ポイントランキング9位で世界選手権大会の出場資格を獲得。2018年1月、会社の同僚だった奥さんと結婚。同時に転職して東京へ転居。3月、KONAチャレのメンバー募集を見て、ロングに新しい目標を見出し応募した。2018シーズンは9月のITU世界選手権をメインレースとして51.5kmに専念し、10月から来シーズンのアイアンマン出場を目指してロングのトレーニングを始めた。

Interviewer

山口一真

1982年東京生まれ。小学校から大学までバスケットボールに打ち込む。社会人になってスポーツから遠ざかり、一時期体重が100kgを超えたが、選手時代のノウハウを活かした食事と運動により1年間で40kgの減量に成功。メイクスのKONAチャレ担当になったのを期にスイム・バイク・ランのトレーニングを始め、木更津トライアスロンでレースデビュー。秋にはアイアンマン台湾を完走した。

仲間で盛り上がる楽しさに
はまったトライアスロン

山口田所さんは小・中学校時代はサッカーをやっていて、高校からハンドボールに移っていますよね。何か転機みたいなものがあったんですか?

田所サッカーは好きだったんですけど、「サッカー部の空気」が好きになれなかったんです。当時の中学サッカー部にありがちだったのですが、選手それぞれの自己主張が強すぎて、チームとして一体になって取り組む楽しさがなかった。

たまたま友達がふたりハンドボール部に入るというので誘われて入ったら、チームの一体感が感じられたので、楽しみながら熱中することができたんです。大学も体育会ハンドボール部で競技を続けました。

山口トライアスロンを始めたきっかけは、関西に転勤して友達を作りたかったからということですが、なぜハンドボールではなくトライアスロンだったんですか?

田所関西に転勤してからも、ハンドボールのクラブで練習に参加はしていたんですが、練習はできてもそこから輪の広がりはありませんでした。そこで、いっそ新しいスポーツをしようと考えて、一番ネタになりそうなスポーツとして思い浮かんだのがトライアスロンでした。

ネット検索で見つけたトライアスロンチームのバーベキューイベントに参加したらすぐに溶け込めて、「いいからレースにエントリーしろよ」と言われて、その場で大会出場まで宣言してしまった。その年に湯原温泉(ミドル)と京都丹波の2大会にチームの人たちと参加しました。

転勤先の関西で、友達づくりのためトライアスロンチーム「Choose to Fight!!」に参加。そこで体験したチームスポーツとしてのトライアスロンの魅力にハマった

山口すごい決断力ですね。迷ったりすることはなかったんですか?

田所年齢もレベルもいろんな人たちがいるチームで、入りやすかったんです。たまたま知人から譲ってもらったロードバイクを持っていたので、とりあえずチームの練習会に参加しました。これまでの部活やハンドボールクラブと違って、いろんな年代の人が一緒に練習するというのがとても新鮮でしたね。平日は片道20㎞の通勤バイクを始めました。

問題はスイムで、最初は100〜200m泳ぐのがやっとでしたが、会社の近くのスポーツクラブで週3回練習し、だんだん距離を伸ばしていきました。レースでは、よくわからないまま買ったウエットスーツがサーフィン用だったり、トライウエアがピチピチで恥かしかったり、戸惑うこともたくさんありましたが、自然の中を走る爽快感や仲間とチャレンジする楽しさにすっかりはまりました。

山口私は小学校から大学までバスケットボールをやっていて、かなりのブランクを経て今年からトライアスロンを始めたんですが、田所さんの気持ちはよくわかります。バスケットボールは学生時代に体育会で真剣に取り組んだだけに、社会人のサークルだとなんだか物足りないんですね。

その点、トライアスロンは個人競技なのにチームスポーツ以上に仲間やチームの一体感がある。そこが面白いところだと思います。

2018年1月、会社の同僚だった奥さんと結婚。国内外各地を巡る大会遠征にも興味をもって、スケジュールの許す限り同行してくれている

田所さんの大会成績

2016年

7月 湯原温泉トライアスロン大会(ミドル):
4時間35分12秒

8月 京都丹波トライアスロンin南丹:
2時間35分10秒

2017年

4月 石垣島トライアスロン:
2時間18分20秒

5月 世界トライアスロンシリーズ横浜大会:
2時間17分6秒

6月 ローズカップ 福山-鞆の浦トライアスロン:
2時間34分11秒

6月 みなと酒田トライアスロンおしんレース:
2時間14分57秒

7月 ひわさうみがめトライアスロン:
2時間27分38秒

7月 いきいき富山トライアスロン:
2時間29分31秒

8月 京都丹波トライアスロンin南丹:
2時間22分39秒

9月 しまなみ街道トライアスロンin尾道:
2時間27分51秒

2018年

5月 世界トライアスロンシリーズ横浜大会:
2時間14分5秒

5月 長良川ミドルトライアスロン102:
4時間39分53秒

5月 潮来トライアスロン:
2時間17分16秒

6月 東京都トライアスロン渡良瀬大会:
2時間12分20秒

7月 みやじま国際パワートライアスロン:
4時間43分47秒

8月 木更津トライアスロン:
1時間33分22秒

9月 ITU WTS Grand Final Gold Coast:
2時間11分24秒

9月 グリーンパークトライアスロンin 加西:
2時間18分8秒

ITU世界選出場を果たして
いよいよKONAへ

山口2017年、2018年はかなりの数の大会に出て、かなりの好成績を上げていますが、ショートに専念したんですね?

田所2017年はITU世界エイジグループ・スタンダードトライアスロン選手権(ゴールドコースト)出場を目標に、ポイントがとれるレースに出場しました。なんとかエイジ9位で出場権を獲得でき、2018年9月のゴールドコーストに出場。スタートからあっというまに置いて行かれるハイレベルな選手たちの速さを体感できて、それまでのレースとは別次元の楽しさを味わうことができました。

2018年9月、オーストラリア・ゴールドコーストで開催されたITU WTS Grand Final(※オリンピック・ディスタンスの選手権)に出場。チームJAPAN(日本代表)としての海外遠征を経験した

山口2018年の春、KONAチャレに応募したのは、アイアンマンにショートとはまたちがう魅力を感じたからでしょうか?

田所前から「アイアンマンの演出がド派手で凄い」という話は聞いていたんです。1月に転職して東京に戻ってきたんですが、そのときはまだショートでもっと上を目指すか、ロングに挑戦するか迷っていました。3月にKONAチャレのメンバー募集告知を見て、これはロング挑戦のいい目標になると感じて応募したんです。

ただ、9月のゴールドコーストが2018年のメインレースでしたから、それまではショートやデュアスロンに出場しました。それ以後はKONAを目指して、ロングのトレーニングを開始しています。

山口これまでの成績を見ると、ショートでの成績もかなりのものですが、ITU世界選手権出場のためにしっかりポイントを重ねて出場権を獲得できたところにも、田所さんのポテンシャルの高さを感じますね。KONAへのロードマップはできあがっていますか?

田所2019年はケアンズで初アイアンマン、秋の韓国をメインレースにする予定です。目標は9時間30分でKONAスロット獲得。まだロング未経験なので何とも言えませんが、何回か経験していく中でKONAには必ず行けるようになると思っています。

ゴールドコーストでは世界各国の強豪エイジによるハイレベルなレースを堪能

多様なKONAチャレメンバー
それぞれの取り組みに興味がある

山口KONAチャレに参加して、田所さんの中で変わったことは何ですか?

田所一番大きいのは、トライアスロンの取り組み方が人によって色々だとわかったことですね。KONAを目指すというチャレンジの中でも、年代や性別だけでなく、KONAへの想い、考え方、目指す姿勢が一人ひとり違う。ひとりでやりたい人もいれば、みんなとやりたい人もいるし、みんなを引っ張っていく人もいる。隙間の時間できめ細かくトレーニングする人もいれば、どかっとまとめてやる人もいる。そこがとても面白いですね。

山口KONAという目標は同じでもそこに至る道は人の数だけある。そこがKONAチャレらしいと思います。

田所僕が毎回フィードバックMTGに参加するのも、そういう人それぞれの取り組み方に興味があるからです。全員が画一的なコミットのしかたをするのではなく、人それぞれがそれぞれのやり方でコミットしていくところが興味深い。

KONAチャレ始動以来、3カ月に一度、開催されているフィードバックMTGには毎回参加(写真右が田所さん)。ひとそれぞれで異なるアプローチの多彩さなど興味は尽きない

山口田所さんを見ていて感心するのは、非常に高い意識でトレーニングし、レースで結果を出しながら、自分だけでなく仲間やチームのこともしっかり見ているという点です。KONAチャレでも、自分のためにノウハウを学ぶだけでなく、メンバーの活動やチームの運営について積極的に発言してくれる。それがプロジェクトの活性化につながっています。

田所半年たってかなり活発になってきましたが、最初のうちはレギュラーメンバーからの情報発信も多くなく、KONAチャレ全体としての熱や本気度に不安を感じることもありました。そこでフレンドから下克上宣言のようなことをしてレギュラーメンバーを煽ったほうが、チーム全体の刺激になるかなと思ったんです。プロレスのマイクパフォーマンスみたいなものですね(笑)

山口レギュラーとフレンドの垣根をなくして一緒にトレーニングするようになったり、田所さんの提案で改善されたことがいくつもあります。チームをよくしていこうという意識はどこから生まれたんでしょう?

田所チームで盛り上がるというのが、僕にとってはとても大切なことなんだと思います。高校でハンドボール部に入ったときも、社会人になってトライアスロンを始めたのも、思えばチームの仲間とどれだけ盛り上がれるかを重要視していたのかもしれません。

8月の木更津トライアスロンで、KONAチャレメンバーのふたり、メイクス山口さんと(写真左から山口さん、恩田一生さん、田所さん、永堀悟さん)。山口さんはこの大会でトライアスロンデビューした

トライアスロンの魅力を広く伝えるために
KONAチャレを盛り上げたい

山口「KONAに行くこと自体にそれほどすごい執着があるというわけではない」という発言もされたことがありますよね?

田所自分がただ速くなってKONAに出るだけなら、KONAに連続出場している人たちが集まっているハイレベルなチームでトレーニングすればいいと思うんです。もちろん、そういうハイレベルなチームも素晴らしいと思うんですが、KONAチャレにはまた違う可能性を感じています。

山口KONAチャレはただ速い人、速くなりたい人の集まりではないと?

田所僕が共感したのは、KONAにチャレンジする仲間の盛り上がりをトライアスリートに、世の中に伝えたいというプロジェクトの趣旨です。

トライアスロンはまだ限られた変わり者がやるマイナースポーツと一般には見られがちですが、自分たちが感じているトライアスロンの魅力をもっと訴求することでトライアスリートのコミュニティーを広げ、活性化していくことができるんじゃないか。

ただ少数の速い人たちが自分のためだけに高いレベルで練習し、競技をしているだけでは伝わらないことが、KONAチャレを通じてなら伝えることができるかもしれないと思うんです。

公式イベントやレースだけでなく、有志メンバーによる合同練習会「KONAチャ練」にも積極的に参加。チームコミュニティとしてのKONAチャレの盛り上がりを力に変えていきたいとも

山口海外のアイアンマンでKONAチャレメンバーが知らない人から「KONAチャレ頑張れ!」と声をかけられたという話もありますから、メンバーの活動が少しずつ知られるようになってきているようです。

田所夢をもって頑張ってる人は応援されますよね。それはただ苦しいこと、大変なことをやってるんじゃなく、その先に素晴らしいことがあるということが伝わるからだと思います。

そういうことをもっと外に発信していきたいですね。伝えるためには、メンバー一人ひとりのキャラとか色が出て、それぞれのストーリーが見えるようになるといいですね。

多様なメンバーの頑張りから足し算でなくかけ算が生まれると、外の人を惹きつけることができ、トライアスロン界がもっと活性化していくと思います。

山口広い視野でトライアスロンを見ているんですね。

田所これからの時代はテクノロジーが発達して、人間が仕事などにかける時間は短縮され、自分のために使える時間が増えていきます。そうなると自分のために何をするのか、生きがいを感じられるほど熱中できることは何かというのがとても重要になってくるでしょう。トライアスロンはそういう時代にとても魅力的な選択肢になりえると思います。KONAチャレは一応3年計画ですが、その先も第2期、第3期とプロジェクトが継続していけるといいですね。

File.01 皆川さん編はこちら
File.02 須田さん編はこちら

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