KONA常連たちに学ぶ。

Vol.02

巖淵 知乃さん

KONA表彰台からプロの世界へ。
ナチュラルなアイアンマンライフの先に

一児の母にしてKONAアスリートの巖淵知乃さん(写真右)。同じくKONA経験者でもある夫・京さん(同左)らに支えられ、出産から約1年3カ月後のKONA復帰戦で2度目の表彰台入り(5位入賞)

KONAチャレメンバーのみならず、トライアスリートなら誰もが一度は到達してみたいと憧れる世界最高峰のロングディスタンス・トライアスロンKONA(アイアンマン世界選手権)
この夢舞台で闘い続けている、KONAアスリートたちの強さの源泉に迫るインタビュー企画、2回目は2019年のKONAで日本勢としては唯一、表彰台に上った巖淵(旧姓・西村)知乃さん。

出産から約1年3カ月後のKONA復帰戦にして、女性最激戦区と言われる「30-34歳」カテゴリーで5位入賞。自身二度目となる表彰台に立ったレースの翌日、現地で話を訊いた。

Profile

プロフィール
いわぶち・ちの

2013年5月のWTS横浜大会でトライアスロン(51.5km)デビュー。同年8月にはアイアンマンJAPAN北海道でアイアンマン・デビューを果たし、エイジ総合優勝で2014年KONAへの出場権を獲得、本選で年代別6位に入るなど、国内ロングの強豪エイジグルーパーとして一躍、注目を集める。2017年、3度目のKONAで5位入賞(25-29歳カテゴリー)した後、2018年7月に第一子を出産。産後の復帰戦となるアイアンマンNZ(年代別優勝)で権利を得て出場した2019年KONAでは、30-34歳カテゴリーで5位入賞を果たす。この成績と、その後の認定記録会でのタイムで基準をクリアし、プロ資格を獲得している。1989年、神奈川生まれ。

>>関連記事「妊娠中&出産直後のトライアスロンby 西村知乃」Well-being Lab~健康寿命100年の創り方

女子エイジグループ激戦区の
30-34歳エイジで5位入賞

今回のKONAからエイジカテゴリーが「30-34歳」に上がって、以前より厳しくなったんですよね?

巖淵 知乃そうですね。エイジグループの女子の中で7位くらいなんですけれど、その上位7人、ほとんどが同じエイジグループなので、超激戦区。ほかのエイジなら優勝できてますよね(笑)。

総合タイムは9時間50分11秒。これはKONAでのベストリザルト?

アイアンマン・ディスタンス自体での自己ベストでした。

あらためて今回のKONAを振り返って、どんなレースでしたか?

(今回から導入された)ウエーブスタートはスタート直後のバトルのような混乱は少なく、やりやすかったんですが、前のエイジグループの人たちを早めに抜かしはじめないといけないので、(今までは男子エイジグルーパーと15分あいていた)抜かさなければいけない人たちが早めに現れるんです。それをパスしていくのは大変でした。

スイム自体の調子はいつもどおり(1時間2分17秒)。KONAではいつも1時間くらいかかってしまうんですよね。

バイクも、5時間半くらいで(5時間27分11秒)、まぁいつもどおりか・・・KONAでのタイムとしてはベストタイムにはなるかなと。KONAウインドが吹いた、KONAらしいバイクパートとしては、よくできたかなと。途中あまり大きなトラブルもなかったですし。

ランは3時間15分24秒。これは好記録ですね。

アイアンマン・ディスタンスのランラップとしてはベストタイムです。

「3種目のうちどの種目でタイムを縮めやすいか?」と考えたとき、自分としてはバイクのほうは少し時間がかかるかなと感じているので、今回はランのほうを重点的に強化していました。

もちろん最終的には、バイクももっと速くならないといけないんですけれど、とりあえず今季はランの強化を優先してきたので、それが良いカタチで出た結果かと。

本当は3時間10分くらいで走りたかったんです。キロ4分半で刻んでいきたかったけれど、途中でタレて、後半こそ粘れたものの結局(3時間)15分かかっちゃいました。

それでもトータルで見れば、KONAでのレースとしては大きく崩れることもなく、良いレースだったと?

そうですね。今の状況ではベストなパフォーマンスが発揮できたと思います。一応、エイジ優勝を狙っていたのですが、最低限でも入賞(表彰台)が目標だったので、そこはクリアできたかなと。

タイム的にも、少なくとも10時間は切りたくって、それでも、今のエイジカテゴリーの表彰台に立つのは難しいくらいでしたから。

今回、私のエイジカテゴリーのトップが9時間20分ほど。ひとりだけすごく速くて、その選手がおそらくKONAのエイジ(プロ以外の一般選手)のオーバーオール(総合)で一番。

もちろん私も「エイジ優勝」という目標は常にありますし、2年前も(前のエイジで)同じ5位で表彰台には立っているので、本当はもうちょっと上に入りたかったんですけれど・・・最後にフィニッシュゲートの手前で差されてしまって(苦笑)。
ホントに後ろに後続の選手が迫っているのを知らなくて、もう(4位入賞)大丈夫だろうと、余裕でペースを落としてフィニッシュゲートを上がろうとしたら、後ろからすごい勢いでバーッと。ちょっとビックリしました(笑)。

フィニッシュゲートのほぼ真下で、後ろから駆け込んできた同じエイジの選手に抜かされ、フィニッシュ直後、思わずその選手と目を見合わせる

にしても、2年前と比べると、今回はエイジカテゴリーも最激戦区に上がった上に、出産を経てのコナ復帰戦での5位。これはうれしいんじゃないですか?

自信になりますね。

KONA自体は今回で4回目の出場なのですが、今までは苦戦している感じでしたね。ほかの各地の予選レースとしてのアイアンマンよりは、パフォーマンスが出しにくいと感じていて、その原因が暑さなのか、コース設定なのか、明確にはわからないんですけれど、ランでも結構タレてしまうことが多くて。

カナダ、台湾、マレーシア、ケアンズ、エイジ優勝したニュージーランドと、海外のアイアンマンには、いろいろ出ているんですが、その中でもKONAは特別。。

個人的には、カナダやNZのコースのように、もう少し小刻みにカーブやアップダウンがあったり、街の中も走るような、変化のあるコースのほうが得意なので、KONAのように、ズーッと真っすぐのハイウェイが続くようなのは、キツいですね。

4回目のKONAにして、初めて戦い方が少しわかったという感じでしょうか。

そうですね。

今回のKONAに向けては、何か特別な対策を?

うーん・・・そうですね、KONAだけのための特別なトレーニングなどをしたわけではないですが、これまでと環境を変えて練習をしたという意味では、2019年は男鹿半島(秋田県)へ2回、合宿に行きました。

半島1周で90㎞くらいあるんですが、風も結構あるので、結果的にKONAに向けた良いバイクトレーニングが積めましたね。

次に向けた攻め方というか、もう少し長期的な戦略もある程度見えてきた?

そうですね。次はやっぱりバイクを強化したいですね。ランは今の感じでやっていけば3時間10分くらいで走れるようになるとは思うのですが、バイクはもう少し(強化に)時間がかかると思うので、じっくりと。

アイアンマンライフを支える夫と、
JISSの妊娠期トレーニングサポートプログラム

ご主人(巖淵 京さん)もKONAアスリートですが、ご夫婦で一緒にKONAに出ている年も?

夫(京さん)はい。2回目と3回目は僕も一緒に出ています。KONAには彼女のほうが先に出ているので、先輩。歳は僕のほうが、ふたつ上なんですが、トライアスロンでは大先輩です(笑)。

トライアスロン自体を始めた時期も、知乃さんのほうがずっと前?

夫(京さん)いえ、トライアスロンを始めた時期も同じくらいなんですけれど、「結果」ではもう全然かなわないので、「師匠」と呼んでいます(笑)。

同じチーム(Team TRION)に所属するKONAアスリートで、ともにトライアスロンのある暮らしを送る上で、一番の理解者でもある夫・京さん(同左)

2019年3月から国立スポーツ科学センター(JISS)の妊娠期トレーニングサポートプログラムを受けているそうですが、これはいつまで?
>>詳細はインタビュー記事参照

年間サポートなので2020年の3月までは受けられる予定です。このサポートがうまくいっての、今回の結果ということでもあると思います。

医学的にもいろいろ調べてもらえるし、出産前後も安心してトレーニングできました。

もともとはトレーニング指導について相談していた関根明子さん(※シドニー・アテネ五輪日本代表)に紹介いただいたのですが、そうした縁でもないとこのプログラムがあるのも知らなかったですね。

知乃さんの場合は、出産予定日7週間前の妊娠32週目まで毎月ハーフマラソンに出ていたり、出産の週も運動はできていた、という記事がありましたが、最近は一般のエイジグルーパーでも、出産を経てすぐに復帰したいという方も増えていると思うので、ほかの女性トライアスリートから聞かれることも増えたんじゃないですか?

そうですね。ただ、結局のところ、人それぞれで、ケースバイケースなので、聞かれても、そんなに的確なアドバイスができるわけではないのですが。

元々の体質なども含め、個人差はかなり大きい?

そうですね。

出産後、実質的なレース復帰シーズンでもあったと思うんですが、そうしたサポートも受けて、特に支障はなかったですか?

レースはコナ以外では、アイアンマンNZ、セントレア70.3しか出ていないんですが、特に大きな問題はありませんでした。

身体はNZに出たときには、もう(出産前に)戻っていたと思うんですけれど、あのときはまだ授乳もしていて、夜も授乳していたので、睡眠(時間の確保)とリカバリーの難しさというのがあって、体力的にも結構キツかったですね。

ですので、NZではレースが終わったときは、もう放心状態だったというか。「とりあえず、終わった・・・」という感じで、コナのことなんか考えられないくらい、出し切った感じでした。

今回のKONAは、1カ月前くらいですが授乳も終わって、朝までちゃんと寝てくれるようになったので。とりあえず、ちょっとひと段落した中で、レースに臨めました。

2019年KONAの表彰台に立つ知乃さん。2017年、25-29歳カテゴリーで5位入賞してから妊娠・出産による休みを挟んで2度目の表彰台

育児と家庭生活と、トレーニングと。

この後も、育児とトライアスロンの競技生活の並行は続いていきますね。

今、仕事は育休中で、職場復帰が来年(2020年)の5月予定なので、そこでどうなるか? 考えているところですが、
仕事と育児と、トレーニング・・・ちょっと想像がつかないですね(苦笑)。

これまでは育休中でもあり、主人の協力もあって、なんとかトレーニングを続けられましたが、これからはあらためて環境をうまく整えて、どうなるか模索中ですが、トライアスリートとしての挑戦は続けていきたいと思います。

この先、プロ化して、さらに上にチャレンジしていくという選択肢も?

そうですね。もし実力がつけば。ただ、具体的に、いつまでにこう、というようなプランまでは決めていないです。

やっぱり子どももいるので、先に立てた計画にこだわってやっていくとうよりは、今できる中で、挑戦していきたい。

トライアスロンを始められた当初からお噂は聞いていて、もともとトレーニングの量(時間・距離)がたくさん積める能力が高いようにお見受けしますが、それはもって生まれたものですか?

どうなんでしょうかね。小さいとき、3~4歳のときに、よく歩かされていました(笑)。駅まで4kmのところをバスに乗らずに歩かされていたり、いつも歩いていましたんですよね。それが、チカラになっているのかも。

故障も全然しない?

故障はたまにあるんです。脚が痛くてまったく走れていなくて、KONAに出られなかった年もありますし。でも、半年とか1年くらい長期的にトレーニングができなくなるような致命的な故障は、今のところはないですね。

もともとロングのトライアスロンに向いていたと思いますか?

体力というか忍耐力には自信があって、仮に「ずっと動き続けていろ」と言われたら、それはいくらでもできるんですけれど、インターバルのような(スピードに変化をつけるような)トレーニングは苦手なんです。

過去のインタビューを拝見していても、ほとんど低強度・長距離のトレーニングしかしていなかった段階で、アイアンマン・ジャパンでエイジ優勝して、コナへの権利を獲ってしまったくらいですもんね。

それだけベースが大きければ、その上にスピード練習を積んだら、まだまだ強くなりそうですけれど、スピード練習は?

嫌いですね(笑)。でもこれからさらに上を目指していく上では、もちろんやっていかないといけないし、一応、今も2週間に1回くらいはやっているんですが。

どなたか外部のコーチから指導を受けているというのは?

関根明子さんに指導をお願いしようと思っていたところで、妊娠・出産となってしまったので、結局、お願いできなかったんです。

子どもがいる今の状態だと、プログラムなりを提供いただいても、それを計画的にこなしていくというのは難しいかなと。できないことのほうが多すぎると思うので。

スイムは週3回、朝スイムに通っていますが、基本的にはトレーニングは、すべて自分で組み立てています。

バイク、ランも今は朝がメイン。以前は子どもを寝かしつけたあと、夜に練習してみようと試みたときもあったんですけれど、結局、一緒に寝ちゃったりして、できないので(苦笑)。

朝スイムの日、朝バイクの日、朝ランする日、といった感じで組み立てています。

ボリューム的には、どのくらいですか?

KONAにあわせたピークの週だと、25~26時間くらいはやっています。

量を落とす週(一番トレーニングが少ない週)で18時間くらいですかね。

今後、育児など生活が落ち着いたら、コーチをつけることも?

考えてはいます。

英語でのコミュニケーションも全く問題ないと思うので、海外のコーチも選択肢に入りそうですね。

そうですね。もちろん興味はあって、海外の選手たちが、どうしているかなど、いろいろ調べてはいます。

ただ、実際にトレーニングを見てもらいながら、指導していただくほうが自分には合っているかなと。自分で信用できる人じゃないと、入ってこないというか・・・頑固なところがあるのか、知らない人に「これをやれ」と言われても、「何でこれをやらなきゃいけないんだ?」「これは何の意味があるんだろう?」「これは意味ないな」「だったらこうしたほうがいいな」という感じになっちゃうので(笑)。

今までが自分の感覚でやってきているので、それに代わるとなると、よほど自分で信頼できる人・納得ができるものでないと、うまくいかないかと。

もちろん、金銭的な問題もありますしね。(家族の中で)私だけに、そんなに投資していていいのかという(苦笑)。

家族での生活とアイアンマンが、ごく自然にともにある

夫(京さん)2020年は、僕の仕事の関係で家族でヨーロッパに住むことになるかもしれないので、そうなったら、彼女も、また今とは違う環境に身を置くことになると思います。

ただ、ヨーロッパであれば、トレーニング環境は日本国内よりも良いかもしれないなと。

もしプロの資格が獲れたら、プロとしてシーズンを闘ってみるというのも面白いかなとも話しています。

彼女自身、それほどKONAだけに執着しているわけでもないのですが、彼女のようなトライアスリートがプロとしてシーズンを転戦するということ自体、それはそれで意味のあることかなと。今はプロ資格を獲る基準もなかなか厳しいのですが。

知乃さん国内での認定記録会は、スイムさえ頑張れば、何とか基準はクリアできるかもしれないのですが、やってみないとわからないですね。

ただ、何がなんでもプロで、とこだわっているわけでもなく、ただ「もっと速くなりたい」という想いだけです。

(プロにしても、エイジグルーパーのまま続けるにしても)今後どのように進んだとしても、たぶんずっと続けていくと思います、アイアンマンは。

お話をうかがっていると、目標ありきの競技志向じゃないというか、変な特別感とか気負いみたいなものもなく、生活の中に当たりまえのようにアイアンマンとか、トライアスロンがあるようなイメージですね。

そうですね。本当に生活の一部という感じです。あんまり目標を達成することばかりに気がいきすぎちゃうと、辛いですよね。

ごく自然に、家族での生活があって、食べて、寝て、運動して、という中に走って、泳いで、みたいなことも入っているというか。

その延長で、自然に(最大)週26時間ものトレーニングとか、積めてしまうわけですね。

本当に好きなことをやっているというだけなんです。

巖淵知乃さんは、このKONAでのインタビューの後、この大会での成績(KONA出場プロ選手とのタイム差 等)と、その後の認定記録会でのタイムで基準をクリア(インタビュー中、一番の課題としていたスイムは基準を「0.83秒」クリア!)し、プロ資格を獲得。
2020年シーズンから、プロトライアスリートとしての活動をスタートしている。

「お金を稼ぐためのプロ活動ではなく、ママアスリートとして、私にしかできない社会貢献ができたら」という、知乃さんならではの「プロ活動」についての決意表明などは、公式ブログやFacebookページでチェックを。

巖淵知乃選手 公式ブログ

https://ironchinostory.wordpress.com/blog/

巖淵知乃選手 公式Facebookページ

https://www.facebook.com/ironchino2020

巖淵知乃選手 公式Instagramアカウント

https://www.instagram.com/ironchino2020/

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