デイブ・スコットのKONAチャレンジ特別講義

KONA6勝のレジェンドが教える
アイアンマンで強くなるために大切なこと。 PART1

1980年代にアイアンマン・ハワイで6勝を挙げ、KONAに君臨したデイブ・スコット。トライアスロン界でいち早くレーニング法を体系化した研究家でもある。現役引退後は指導者としてクレイグ・アレキサンダーやクリッシー・ウエリントンなどハワイ優勝者をはじめ、多くのトライアスリートを指導している。今回のKONAチャレ特別セミナーではこのKONAレジェンドに、より速くなるために大切なことを教えてもらった。講義の途中で参加者との質疑応答も随時行われ、セミナーの内容は充実したものとなった。その内容をPart1、Part2に分けて紹介しよう。

PART1.
高強度トレーニングは 短時間で精度高く

重要なのは健康なトライアスリートであること

まず、多くのトライアスリートが「より速くなるために必要なのはスイム・バイク・ランのトレーニングである」と考えています。確かに3種目のトレーニングは重要ですが、それ以外にも大切なことはたくさんあります。

速いトライアスリートになるためには、ただ速いトライアスリートであるだけでなく、健康なトライアスリートであることが重要です。そのためには強くなる努力だけでなく、栄養や関節の可動性、身体の柔軟性を高めるエクササイズなどが必要です。

速くなることと健康でいることはオーバーラップしています。トレーニング、エクササイズ、食事など、たくさんの方法がある中で、何がパフォーマンス向上と健康増進の両方に役立つか常に考え、正しい方法を選んでいく必要があります。

今日はより良い結果を得るために重要な3つの分野についてお話ししましょう。
それは次の3分野です。

MAKES本社会議室で行われた座学には、チャレンジ、フレンドメンバー他、約20人が集まった。コナチャレメンバー向けのレベルが高い話をノンストップで伝えるデイブ・スコット ©Kenta Onoguchi

1.Workout Structure(トレーニングの構成)
――速くなるには高強度インターバルトレーニングが必要

HIIT/高強度インターバルでパフォーマンスと健康が向上

いつも同じペースでトレーニングしていたら、レースでも同じペースで泳ぎ、走ることしかできません。低・中強度だけのトレーニングをしていたら、そのスピードしか出せません。

筋繊維の収縮には低強度・中強度で使われる遅い筋収縮と、高強度/速い動きに使われる速い筋収縮があり、スローペースでは遅い筋収縮しか鍛えられないからです。しかもスローな運動は健康にも良くない影響を与えます。

速くなるには高強度インターバルトレーニング(HIIT / High Intensity Interval Training)が不可欠です。これはごく短時間でスピードを強化することができます。しかも健康にも良い効果があります。

速くなるにはタイプ2a(T2a)の筋収縮を鍛える

筋収縮には次の3種類があります。

筋収縮タイプ1(T1)=遅い筋収縮(低速・中速の持久系運動に使われる)

筋収縮タイプ2a(T2a)=速い筋収縮(高速の運動、持久系運動の加速に使われる)

筋収縮タイプ2b(T2b)=超高速筋収縮(短い爆発的な動きに使われる)

このうち高強度インターバルトレーニングHIITで鍛えられるのはT2aです。T2aは加速するとき、レースで前の選手に追いついたり追い越したりするときに使われます。レースではスピードの上げ下げが繰り返されます。加速するたびに使われるのがT2aです

T2aはT1の5倍の力がありますが、エネルギーも5倍消耗します。T2aを鍛えずにレースに出ると、エネルギーが速く枯渇しますが、トレーニングでT2aを鍛えていれば、筋繊維に蓄えたエネルギー(グルコース)を復元することができ、T2aを何度も使うことができます。

T2aを鍛えると、速い動きができるようになるだけでなく、多くの血液を楽に循環させることができ、心臓にも良い影響が生まれます。心臓から送り出させる血液が体中の動脈を循環するのを、筋繊維の収縮がサポートするからです。逆にT2aを鍛えないと心臓にかかる負担が増え、健康に悪影響を与えます。

また、T2aは筋収縮T1の機能開発にも役立ちます。T2aの運動は多くのエネルギー(グルコース)を消費しますが、HIITを継続することで身体が適応し、少ないグルコース消費で動けるようになります。

T2bは爆発的な瞬発系の運動に使われる筋収縮で、トップ選手などにはスイムで使う人もいますが、基本的にトライアスロンでは使わないと考えていいでしょう。

HOKAONEONEの試し履き+デイブ・スコットとの朝ランイベントには、仕事前にも関わらず多くの人が集まった ©Kenta Onoguchi
ランイベントの試し履きではHOKAONEONEの「クリフトン4」と「マッハ」が用意されKONAチャレメンバーもKONAでのNo1シューズを体感した ©Kenta Onoguchi

高強度トレーニングは正味8〜24分

HIITのポイントは、T2aの高強度運動を短く分割して行うことです。分割のしかたや構成は3種目それぞれいろいろありますが、分割したT2a 運動の長さは25秒〜5分。皆さんにおすすめするのは25秒〜2分くらいです。

インターバルレストを挟んでこの短いT2a運動を繰り返します。1回のトレーニングでT2a運動の時間は正味8分〜24分。ウォームアップやインターバルレスト、セット間の休憩、クールダウンを入れても30分弱から1時間くらいです。

次にHIITの例を紹介しましょう。
あくまで基本的な一例です。

T2a運動計13分20秒のHIIT≫≫≫ランニングの場合

ウォームアップ12分
   ▼
T2a(50秒×2 + 30秒×6 + 40秒×3)×2セット
   ▼
クールダウン6分
※T2aの強度はIM70.3のレースペースよりやや上。

インターバルレスト(ごく軽いイージーでも可)は各T2aの長さの1〜2倍。つまり50秒なら50秒〜1分40秒、30秒なら30秒〜1分、40秒なら40秒〜1分20秒。セット間の休憩(ごく軽いイージーでも可)は5分。トータルタイムはインターバルレストをT2aの1倍とした場合、ウォームアップやレスト、セット間の休養(イージーな運動)、クールダウンを入れて約47分です。

T2aの強度は長さによって変える必要はありません。ペースを維持するだけで効果があります。

インターバルレストの長さは、涼しく乾燥した気候なら1倍、日本の夏のように暑くて湿度が高いなら2倍など、条件によって調節します。無理にレストを短くすると身体に負担がかかりすぎ、トレーニングの効果が得にくくなります。

バイクなら強度はパワーメーターで測るのがベストです。パワーメーターのほかにスピードメーター、体感疲労度なども合わせて判断しながら強度を調節してください。心拍計は強度が数値に反映されるまでにタイムラグがあるので、1回のT2a運動 が2分未満のトレーニングには不向きです。

©Kenta Onoguchi

Q&A

KONAチャレメンバー「HIIT」は週に何回やればいいでしょうか?また、何日も続けてやらないほうがいいですか?

Daveバイクとランは週1回ずつ、スイムはそれほど負担が大きくないので週2回でもOKです。バイクとランは中1日以上空けましょう。たとえば月曜にバイク、火曜にスイム、水曜にラン、木曜か金曜にスイムといった具合に、バイクとランの間にスイムを挟んでもOKです。私がボルダーでやっているスクールも大体こんな感じです。

KONAチャレメンバー低強度の長いトレーニングはやらなくていいんでしょうか?

Daveロングライドや長いラントレーニングなど、長いトレーニングは3週間〜1カ月に1回くらいでいいでしょう。毎週やってはいけません。多くのアスリートが長いトレーニングを毎週やる必要があると思っていますが、長い低・中強度運動の効果は主にメンタルなものです。私がクレイグ・アレキサンダーのコーチをしていたとき、ロングライドは2週間に1回でした。クリッシー・ウエリントンの場合は2〜3週間に1回、長さは最大でも4時間半でした。長いトレーニングをやる場合は間隔を空けて、間にHIITを挟むべきです。

T2aにダンシングを入れる

バイクのHIITでは、T2aの中にダンシング(立ちこぎ)を入れましょう。たとえばT2a 50秒なら最後の15秒とか、先に15秒立ちこぎしてからシッティングに移るといった変化をつけましょう。立ちこぎのメリットは楽に強度を上げられることと、足腰のストレッチができることです。本番のレースでは加速したいときだけでなく、身体をほぐすためにダンシングするのが効果的です。レースではいろいろ状況が変わりますから、どんな状況でもリラックスして効果的にダンシングできるよう、HIITで日頃からダンシングする習慣をつけましょう。

©Kenta Onoguchi

Q&A

KONAチャレメンバーレースのバイクコースがフルフラットでもダンシングは必要ですか?

DaveフラットなコースではDHポジションで走り続けたほうがバイク自体はタイムが上がりますが、ずっと腰を曲げた前傾姿勢をとり続けることで腰が固まってしまい、ランで力が発揮できなくなりがちです。トータルでタイムを短縮するには、8〜15分に1回、10秒以内でもいいからダンシングして、足腰をほぐしましょう。特にバイクスタート時はスイムのヘッドアップで腰に負担がかかっていますから、その凝りをほぐすためにまずダンシングをすべきです。

KONAチャレメンバーHIITのスピード/強度はずっと70.3よりやや上ではなく、変化させたほうがいいのでは?

Daveこれは人によります。バックグラウンドやその人のフィットネスレベルによって変わります。でも基本は今紹介したIM70.3よりやや高い強度というくらいで効果が得られます。HIITをやっていない人は、まず5〜12分(T2aの正味合計)のHIITを週2回、3週間続けてみてください。きっと良い結果が得られるはずです。

KONAチャレメンバー「IM70.3の強度より高く」というのはどのくらい高く?

Daveオールアウトじゃなく、IM70.3のレースペースより少し高い程度でOK。やり過ぎるとケガのリスクがあるので気をつけて。

KONAチャレメンバー毎週土曜にロングライド、日曜に30㎞走をやっているんですが、これはNGでしょうか?

Daveランの故障は疲れ、蓄積疲労が原因で起きることが多いので、ロングライドの翌日にランをやるならもっと減らすべきです。30㎞を20㎞に減らすのではなく、MAX75分くらいにしましょう。

©Kenta Onoguchi

≫≫≫PART2では、デイブが考える補給や食生活など「食」と筋力トレーニングの必要性などについて紹介します。

プロフィール

Dave Scott

1980年、第3回IRONMAN世界選手権(IMハワイ)で前年までの優勝タイム(11時間台)を大幅に塗り替える9時間台のタイムで制してアイアンマンをチャレンジイベントからスポーツへと昇華させた。以来、1987年までに通算6勝をマーク、1994年には40歳で2位、1996年には42歳で5位に入るなど、約16年間にわたりアイアンマン・シーンを代表するトッププロとして活躍した。1989年、打倒デイブ・スコットの悲願をかけて挑んだマーク・アレンとの激闘「IRONWAR」(※アレンがランでの並走勝負を制して初優勝し、その後の5連覇につながる)は、アイアンマン史上最高の名勝負として語り継がれている。1954年生まれ、64歳。

KONAチャレンジ公式パートナー「HOKA ONE ONE」について

HOKA ONE ONE®(ホカ オネオネ)はアイアンマンシリーズ及び、コナ(アイアンマン・ハワイ)の公式シューズ。大会公式ブランドとしてランコースのネーミングライツを2年連続で獲得し、2017年にはついにランニングシューズシェアNo1になった。コナレジェンドのひとり、デイブ・スコット(アンバサダー)も認める世界イチのシューズブランド。

トップページに戻る